レアアース王国・中国の「毒」 官民が結託し不正が横行
不正監視のため警察の協力を仰いだり、元兵士を雇っている県もある。ある鉱産物資源管理局職員は「巨大な利益の誘惑を断ち切るには強い力がいる。人のおカネを断ち切ったのだから、職員はいつ刺されるかわからない。用心している」と話す。
レアアースに携わる人間には2種類いるという。一つは牢獄から出てきた人間で、もう一つは牢獄にいる人間を出すことができる人間だ。
「そんな奴はどんな力を持っていると思う? 管理局の人間は身の危険にさらされているだけでなく、政治的にも危ない立場なんだ」(前記の管理局職員)
レアアース採掘による環境汚染も深刻だ。レアアースの精錬に使われる硫酸アンモニウムや、国の排出基準を大幅に超えるアンモニア、窒素を含んだ廃水は、土壌や農地汚染の原因になっている。
カン州市では、採掘の残滓が積み上がったハゲ山や廃棄された鉱山が放置されている。国は対策に乗り出しているが、その面積が広すぎて経費がかさみ、焼け石に水だ。
市内のある県は、廃棄鉱山の総合整備の名目で企業を誘致した。陶磁器の原料になるカオリン(高嶺土)の廃棄鉱区での回収と、それを用いた陶磁器生産を始めるとの触れ込みだったが、今のところカオリンを採掘し省外に売っているにすぎない。県当局はこれに不満で、陶磁器生産に乗り出すよう指導しているが、企業側は応じていない。
中央と地方との利害対立
中央政府の指示の下、レアアース業界で進む整理統合だが、中央企業(中央政府直轄の国有企業)と地方政府・地方企業との間で、水面下の戦いが厳しさを増している。地方は採掘をめぐる主導権を簡単には手放したくない。