レアメタル争奪戦の裏側、レアアース狂想曲と中国の対応

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中村繁夫 アドバンスト・マテリアル・ジャパン社長

「物壯則老(物壮(さか)んなれば則ち老ゆ)」とは老子の言葉である。「何事も強すぎると、やがて発展の余地は無く老いるしかない」といった意味だ。相場も上昇が速すぎると、頭打ちの後は急落するのが世の常だ。
 
 現在のレアメタル市況の中で、異常な値上がりを示している元素がレアアース(希土類)である。レアアース価格は、7月7日に中国商務省が輸出枠削減の発表をした後、暴騰し始めた。酸化セリウムや酸化ランタンは従来、1キログラム当たり2~3ドルの水準だったが、7月末には13ドル、さらに8月末時点では、何と45~50ドルにまで値上がりした。
 
  わずか1カ月で3~4倍の値上がりだから、異常としか言いようがない。筆者は何度もレアアース価格の動向に注意を喚起してきたが、供給が中国に集中しているために不安が広がり、手がつけられない状況に陥っている。
 

レアアース輸出枠を40%削減した中国の思惑

レアアースはランタンなど17種類の元素で、全世界の供給シェアの9割以上を中国が占める。その用途は希土類磁石やハイブリッド車用ニッケル水素電池、液晶ガラスの研磨剤や光学レンズの添加剤など多岐にわたるため、日本のハイテク産業の根幹にかかわる問題に発展している。中国依存が強いことから、その危険性は認識していたが、戦略的発想の不足から供給不安に対する抜本策が打てていないのが実態だ。

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