電通、世界大手に向け「ビッグチャンス」到来 グローバル企業の獲得は進むのか

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アジア・太平洋地域は売上総利益ベースで12.8%の伸びだった。豪州、タイ、マレーシアなどが2ケタ成長を記録し、中でもインドは、グローバル企業をはじめ、自動車など日系クライアントの貢献で大幅な伸びを見せた。欧州も競合他社からシェア奪取に成功したことで、13.8%増と伸ばした。

米州は9.1%(売上総利益)の伸びだった。昨年から扱いを開始した大型案件の計上や、M&Aによる子会社群の貢献もあった。7~9月期以降はグローバル企業の大型案件が一巡することや、一部クライアントを失ったこと、そのほかブラジルの景気後退などから減速感もみられる。ただ、「失った案件は1回限りのイベントで一時的な影響。足元で新たなクライアント獲得も進んだ。引き続き競合を上回る成長ができる」(ティム・アンドレ―取締役)としている。

攻めるしかない。顧客獲得の大チャンス

今後のカギとなるのは、北米でのクライアント獲得だ。現在、グローバル企業が数年に一度となる広告代理店の見直し時期に入り、各社がピッチと呼ばれる競合プレゼンテ―ションを実施している。その中で、電通は10月に米食品大手「モンデリーズ」の北米におけるビジネスなどを獲得。2016年度以降はこうした案件が海外事業の上乗せとなる。

電通は世界で5番手だが、競合プレゼンを実施するグローバル企業の大半と取引がない。そのため、新規顧客を獲得する絶好のチャンスなのだ。石井直社長もこう息巻く。「今後もいい結果を期待している。われわれは5番手。失うものより、獲得できるもののほうがはるかに大きい」。

電通は2013年3月に英広告会社のイージス・グループを約4000億円で買収し、本格的な海外展開を開始。その後も新興国を含め、世界各地で買収を重ねてきた。すでに、売上総利益に占める海外事業の割合は、4~6月期に続き、上期も国内事業を上回っている(構成比は53.8%)。

世界首位の英WPPをはじめ、米オムニコム、仏ピュブリシス、米インターパブリックといった上位陣に迫るために、グローバル企業の新規獲得は必須の課題だ。足元は好調な業績が続くが、今後はそれ以上に、北米でのクライアントの獲得状況が注目されることになりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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