開発・投資・取締役会まで参加──新興スマホメーカーNothingが選んだ異例の成長戦略とは

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ただし、実際にはデザイン案を「公募した」だけではない。選ばれた応募者がデザイナーとしてNothingの開発現場に入り、9カ月もの期間をかけて作られる。

その過程では、従来同社の中で使わなかった素材の採用も厭わない。

本製品では、スマホのバックパネルとしてすりガラスが採用された。これ自体はスマホとしては珍しくないが、同社は採用しておらず、加工にまつわる社内ノウハウがなかった。単なるファンサービスなら、通常は却下されることだろう。だが、同社は提案を受け入れ、1000台限定ながら生産に踏み切った。

関わるのはデザインだけではない。

同社はコミュニティから、代表を取締役会に招いている。コミュニティの立場から経営に参加するためだ。

Nothingは非上場の企業だが、コミュニティからの投資を受け付けている。最新のコミュニティ投資ラウンドでは、5000人から800万ドル(約12億4000万円)の資金調達を達成している。投資を受けているから取締役会にも招くし、デザイン開発やソフトウェア変更への意見も積極的に受けつけている。ある種のステークホルダーとしての参加意識を高めるのが目的だ。コミュニティ投資にはリスクがあり、日本からは適格投資家以外の参加は難しい。コミュニティ投資は同社の資金調達としてごく一部に過ぎないが、経営の手法としてユニークであるのは間違いない。

コミュニティ、という言葉から、我々は「ファン」という印象を持つ。だが、同社はコミュニティを単純にファンの集まり、とは認識していない。

Nothing Japanマネージングディレクターの黒住吉郎氏は「コミュニティは我々と同じように、熱意を持ってプロダクトのことも考えている。いる場所が違うだけだ」と話す。

これは、スマホという製品を差別化するための手法と考えることができるだろう。すなわち、コミュニティというユーザー参加型の場を重視することで、自社製品の位置付けを変えようとしているわけだ。

Nothing Japan マネージングディレクターの黒住吉郎氏
Nothing Japanマネージングディレクターの黒住吉郎氏(筆者撮影)

同じものを良いと思う人同士の価値

ご存じのように、スマホ市場は大手の寡占が進んでいる。アップルやサムスン、グーグルなどの他、日本だとシャープやソニーなどの名前が思い浮かぶ。

実際にはもちろん、もっと多数のメーカーがある。ただ差別化が難しい。認知の高い、要は売れているメーカーほど、自社での独自性開発に力を注いでいるものだ。

Nothingも例外ではない。

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