無双し続ける《指原莉乃》異端から王道極めた凄み CM出演、番組MC、アイドルグループのプロデューサー、作詞まで… 

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そして近年、指原のアイドルプロデューサーとしての資質は大きく開花しつつある。

現在指原がプロデュースするアイドルグループは、=LOVE(イコールラブ)、≠ME(ノットイコールミー)、≒JOY(ニアリーイコールジョイ)。この3組は姉妹グループの関係にある。

「声優アイドル」という元々のコンセプトもあり、いずれも可愛さを前面に打ち出した王道路線のアイドル。17年に最も早く結成された=LOVEは着実に実績を重ね、今年の『紅白』では初出場候補としてメディアで名前があがるまでになった。

キミは=LOVEを愛せるか!!!
指原莉乃プロデュースのアイドルに愛されるアイドル“=LOVE”。冠バラエティ番組『キミは=LOVEを愛せるか!!!』はフジテレビで放送中だ(画像:フジテレビのプレスリリースより)

特筆すべきは、指原莉乃がこの3組のシングル曲すべての作詞を手がけていることだ。アイドルのプロデューサーが詞や曲などの楽曲制作にも携わることは珍しくない。ただ、タレントというイメージが強い指原が本格的に作詞もしていると聞いて、驚くひとも多いのではなかろうか。

指原莉乃ならではの多彩な“当事者感覚”の強み

そして今年、指原莉乃はとうとう日本レコード大賞の作詩賞を受賞するに至った。対象となったのは、=LOVEの「とくべチュ、して」(25年2月発売)。軽快な曲に乗せて好きな相手へのじれったさとストレートな恋心を綴った歌詞。「とくべチュ」は「特別」と「キス」のダブルミーニングになっている。リズムやメロディへの言葉、フレーズの乗せ方の上手さが印象的だ。

同賞は専業作詞家やミュージシャンが受賞するのが通例であり、その意味でも快挙と言えるだろう。この賞を受けて、“師匠”にあたる秋元康がAKB48の歌詞を書いてもらいたいと直々にオファーする場面もあった。実際、今後AKB48グループの楽曲に作詞家として参加する可能性も低くないだろう。

指原莉乃
指原莉乃公式ファンクラブサイトもある(画像:ANYLAND,Inc.より)

アイドルプロデューサーとして、指原莉乃には秋元康にない強みもある。それは、演者の気持ちとファンの気持ちの両方をよくわかっているということだ。

今年『紅白』に初出場するFRUITS ZIPPERやCANDY TUNEなどが所属するアイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」の総合プロデューサー、木村ミサも熱烈なアイドルファン、かつ元アイドルの経歴を持つ。指原の場合は、それらに加えて現役のタレントというもうひとつの顔もある。

思うに、いまアイドルの世界では、プロデューサーにも、より“当事者感覚”が求められるようになってきている。

SNSでの誹謗中傷の問題なども深刻化するなか、プロデューサーにはアイドル本人の気持ちを十分理解することが必要だ。しかし同時に、ファンが喜ぶパフォーマンスや発信とはどのようなものかを敏感に察知し、形にする必要もある。

おそらく演者とファン両方の世界を深いところまで経験的に知る指原莉乃ほど、多彩な“当事者感覚”が備わったプロデューサーは、いまほかにあまりいないだろう。

気づいてみたら、ここ数十年来のアイドル文化のさまざまな歴史が合流し、アップデートされる場の中心にいる。そんな存在として、指原莉乃は再発見されつつあるのではなかろうか。今後もしばらくその動向から目が離せない。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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