"18年ぶり内部昇格"新会長が《NHK衰退》を加速させる? 肝いり「NHK ONE」想定外の欠陥が招く致命傷の必然

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縮小

この考え方を図にまとめてみた。放送では見てくれなくても、「NHK ONE」を入り口にコンテンツを見てもらい、ネット上でもNHKの存在を認識してもらう。これにより、NHKの必要性を認識してもらえれば、ネットでの受信料契約の可能性も出てくる。将来的に放送が縮んでも、ネット上でNHKは存在し続けられる。これが左側に記した「理想」だ。

必須業務化
(出所)筆者作成

ところが、23年5月の有識者会議でNHK側が発表したのは、「放送と同一の情報内容」を届けるのがNHKのネット展開だ、との考え方だった。これには私を含め、傍聴していた人々は驚愕した。せっかくのネット展開を「放送と同一」に押しとどめてしまうというのだ。ネットを必須業務化する意義が半減してしまう。

NHKの選択を図にすると、右の「現実」のほうになる。自らネット展開の可能性を縮めてしまった。これでは、NHKがいかにネット展開を強化しても、若い利用者には届かず、将来的なテレビ放送の縮小と共に沈んでしまう。

「NHK ONE」が理想からかけ離れてしまった事情

このとき、「放送と同一」をプレゼンしたのが井上氏だった。背景には、日本新聞協会と日本民間放送連盟からのNHKに対する強いプレッシャーがあった。

有識者会議でも、ネット業務の具体化の議論で2団体から厳しい注文が入った。NHK側はまるであらかじめ示し合わせたかのように制限を受け入れていく。

それまでNHKのWebサイトは「理解増進情報」とされ、放送できなかった情報も掲載。ネット独自の特集サイトも存在し、多くの人に読まれてきた。「政治マガジン」「国際ニュースナビ」のようなディープな報道もある一方、「事件記者取材note」のような記者個人の思いが書きつづられたものもあり、時にバズることもあった。

だが、ネットの必須業務化にあたってWebサイトは「番組関連情報」と定義され、井上氏のプレゼンした「放送と同一」の考え方に沿って、放送した情報に限定されることになった。これに伴い、上に挙げた「理解増進情報」にあたるサイトが24年春に一斉に閉じられた(詳細は「NHK『1000億円削減』とコンテンツ拡充の大矛盾」参照)。

読み応えあるサイトの閉鎖は、受信料を払ってきた人々からするとサービスの後退だ。最近になって、これを問題視する人々が抗議の署名活動を展開している。

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