民主党のキーパーソンが語る原発安全対策「日米の大きな格差」
現場におらず、断片的な情報しか持っていないにもかかわらず、米国の規制当局が福島第一原発の技術上の問題点について実によく熟知していたことがわかりました。危機の最中に米国政府が支援の用意があると日本政府に伝えたのは、原子力安全・保安院や東電の危機管理能力に疑問を抱いていたからだという事実を改めて確認することができました。
--マグウッド委員との面談記録によれば、同氏は「原子力安全についての見方は日米で異なると認識している」と話していたようですね。
マグウッド氏が述べていたことの中で印象に残っているのは、スリーマイル島原発事故からいかに多くの教訓を米国が引き出したかということです。同事故をきっかけに米国ではオーバーリアクション(過剰反応)だと批判されるほど徹底した安全対策を講じたといいます。しかし、オーバーリアクションこそが後に(厳格さで知られる)NRCを生む原動力になったといわれています。
重大事故が絶対に起こらないという「安全神話」に安住せず、人材養成に全力を注いできたとマグウッド氏は語っておられました。しっかりした住民の避難計画を持っていて初めて、原発を動かすことができるという考えに立っていることもわかりました。
ひるがえって日本は福島の事故から何を学ぼうとしているのか。このままでは、改革のチャンスを逃すことになりかねません。
“管制塔”が壊れたまま、安全性の確認すらできていない原発を再稼働させようとする政府の姿勢に批判が集まるのは当然です。今のままでは、スリーマイル島事故を起こした米国やチェルノブイリ事故から学んだ欧州よりもはるかに低いレベルの安全基準で我慢せよと国民に強いることになってしまいます。独立性の高い新たな規制組織を立ち上げるとともに、原子力規制にたずさわる人材の育成についての明確なビジョンを構築すべきです。
(岡田広行 =東洋経済オンライン 写真提供:東京電力)
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