自由求め、新境地へ。壁に直面し、組織へ。ミドル世代のフリーランス増加、「選択」のその先は
立場の弱さに加え、報酬や業務の条件改善への偏見も根強く、交渉を躊躇するフリーも少なくない。こうした実態から、昨年フリーランス法が施行され、取引の適正化を目的に発注業者への罰則も設けられた。
フリーの道は一つではない。自分の適性を見極め、組織に戻る人もいる。
新興メディアで働く女性(51)は、昨年まで2年半、フリーで働いた。
前職もメディア企業。前例踏襲になりがちな組織文化に未来は見えず、「50代の独立を目指そう」と決め、MBA取得や社内新規事業への参画など、スキルや経験を積んで備えた。
立ち上げたウェブメディアで、読者コミュニティーの運営に関わり「人をつなぐ仕事をしたい」という思いが強まり、早期退職制度の開始を機に退社、大学の社会人講座でコミュニティー運営を半年学んだ。
フリーになった後、ベンチャーや公共団体でコピーライティングや広報を請け負った。働く時間は会社員時代の7割ほど。平日昼に映画館に行ける自由や長年の肩こりが消える解放感を味わった。
自分の適性と向き合う
一方で、業務委託ゆえの「外の人」扱いに戸惑った。広報戦略など責任が伴う仕事を任されたのに、必要な内部情報が共有されない。業務の責任者からの指示もあいまいだった。
期待と実務のギャップに悩んだ末、自ら契約終了を申し出た。その先の不安が募ったころ、知り合いから「うちで働けば?」と誘われ、今の会社に入社した。
フリーだった2年半は、自分の適性と向き合う時間でもあった。
コミュニティーづくりの仕事は、想定していたより厳しかった。コワーキングや読者コミュニティーなどで働いてみたがピンとこなかった。
かといって新たな場を立ち上げるには、コンセプト作りから収支の見通し、売り込みまで、ゼロから始める作業が必要だ。
「事業計画を自ら作り、飛び込みで売り込む力はない。失敗してでもやりたいと腹をくくれなかった」
今の職場は若い社員が多く、情報をオープンに共有する文化が心地よい。
大企業の新規事業チームに伴走し、構想を言語化する仕事をしたり、副業でイベントのファシリテーションをしたりすることもある。
「つながりを生むという意味では、コミュニティーづくりにも似た仕事ができている」とも感じている。
業務チャットで同僚に仕事の背景や指摘の意図まできめ細やかに共有する習慣は、多様な人と共に仕事をしたフリー時代の経験からだ。
フリーに戻るつもりはないが、組織に身を丸ごと預ける気もない。「会社の中の個人事業主」という意識で、これからも働き続けるつもりだ。
(ジャーナリスト・錦光山雅子)
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