超有名医学誌が示す「脳の健康を害する」14のリスクの中身――女性が特に気をつけたい「4つの追加リスク因子」も新たに判明【医師が解説】

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資産の急激な減少は約14%、貧困は約2%、所得格差は約2%、そして主にアフリカなどで問題になるHIV感染は2%の認知症リスクに関係すると見積もられました。

貧困が認知機能を低下させる?

まず貧困について考えてみましょう。

世界推計によれば、女性は無償の家事・ケア労働に1日平均約4.5時間を費やしており、男性の約1.4時間の3倍以上にのぼります。

家事・ケア労働をすること自体は運動不足解消や社会的つながりを保つことになり認知症リスクは減りますが(関連記事:「家事」をする人は"脳が衰えない"報告続々の驚き)、収入が得られず貧困に陥ると、逆効果も生じてきます。

また、15〜24歳の若者のうち、教育も就労もしていないニート層は全体の約20%で、その約3分の2が女性です。若い女性が教育や仕事の機会から排除されやすく収入が得られにくい構造は、世界共通の課題です。

日本でも状況は深刻です。

相対的貧困率こそ全体で2割弱と高くありませんが、個別で見ると高齢者と単身世帯に貧困が集中しています。実際、最もリスクの高い高齢の単身女性の貧困率は4割超と推計されていますし、勤労世代でも、20〜64歳の単身世帯に限ると、女性のおよそ3人に1人が貧困ラインを下回っていると見られます。

貧困は単なる経済問題にとどまりません。

神経科学や脳画像に基づく研究によれば、貧困状態は脳の前頭葉や側頭葉、海馬の灰白質の容積の減少と関連しています。つまり、貧困は認知機能を低下させるおそれがあるのです。

複数の研究を総合すると、貧困は認知症リスクを平均約2倍弱高めることが示されています。

所得格差も同様です。日本の研究では、所得格差の改善が認知症のない健康寿命の伸びと関連することが示されました。国際的な研究の平均値では、所得格差は認知症リスクを約2倍高めます。

所得格差の大きな要因になっているのが、日本の男女賃金格差です。

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