超有名医学誌が示す「脳の健康を害する」14のリスクの中身――女性が特に気をつけたい「4つの追加リスク因子」も新たに判明【医師が解説】

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2024年の賃金構造基本統計調査では、フルタイム労働者の月額賃金は男性36万3100円に対し、女性は27万5300円で、女性は男性の約4分の3の水準にとどまっています。

その背景にあるのが、女性に非正規雇用が集中していることです。

2023年には女性の約54%が非正規で働いており、男性の約23%に比べて倍以上の割合です。非正規は賃金も昇給も限られ、正社員との差が将来の年収や年金にまで響きます。特に30代以降は、結婚や出産をきっかけに女性の正規雇用が減るL字カーブが顕著で、ここから男女の格差が一気に広がっていきます。

経済的ショックによる資産の急激な減少の影響も深刻です。失業、突発的な医療費、市場の暴落など、家計資産の75%以上を失うような経験は、認知症リスクを平均14倍も高めることが、アメリカ、中国、イギリスなどの研究で明らかになっています。

日本の女性は、男性に比べて生涯賃金が圧倒的に低く、非正規雇用も多い。結婚して配偶者の収入に頼っていた女性が突如として経済的困窮に陥るケースも増えています。

HIV感染については、特にサハラ以南のアフリカで重要な因子で、HIVは認知症リスクを約2倍高めることが示されています。

経済問題は脳の健康問題でもある

非正規雇用の多さ、育児や介護による離職、昇進の遅れといった日本の女性が直面するこれらの問題は、単なるキャリアの問題ではなく、脳の健康の問題でもあるのです。

職場での男女格差の是正、同一労働同一賃金の実現、育児・介護支援の充実は、実は認知症予防策でもあるということです。

また、突発的な経済危機への備えも重要です。

経済的ショックは認知症リスクを大きく高める可能性があり、その影響はほかのどの因子よりも深刻です。ですので、家計の最低限の現金準備、過度な借り入れの回避、失業保険などのセーフティネットの理解。これらは単なる家計管理ではなく、将来の脳の健康を守る行動でもあるのです。

私たちの脳は、日々の暮らし方や働き方、そして社会の制度によって守られも、脅かされもします。

だからこそ生活習慣に加え、経済的基盤を整えておくことは、未来の認知症リスクを6割以上減らす最も確かな投資になることを知っていただければと思います。

谷本 哲也 内科医

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たにもと てつや / Tetsuya Tanimoto

1972年、石川県生まれ。鳥取県育ち。1997年、九州大学医学部卒業。医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック理事長・社会福祉法人尚徳福祉会理事・NPO法人医療ガバナンス研究所研究員。診療業務のほか、『ニューイングランド・ジャーナル(NEJM)』や『ランセット』、『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』などでの発表にも取り組む。

 

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