反米志向秘めるプーチンは決して戦争を止めない/トランプ和平仲介が不発に終わった理由、欧州・ロシアの軍事的緊張は一段と激化へ

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ドイツが徴兵制を部分的に復活させることを決定したのに続き、フランスも若者を中心に志願による新たな兵役制度を26年夏から導入することを決めた。また、ドイツ軍はイスラエルから購入した弾道ミサイル迎撃システム「アロー3」を、ミサイル防衛構築のためにドイツが主導する「欧州スカイシールド・イニシアチブ」の一環として運用を開始した。

すでにロシアと欧州の戦争は始まっている?

ドイツで新設されたドローン対策部隊の警察官(写真:Bloomberg)

欧州では、数年後に軍の体制を整えたロシアがバルト3国など東欧に攻撃を仕掛けてくるとの危機感が広がっている。ロシアはすでに東欧のみならず西欧でも無人機などを使った領空侵犯を繰り返しており、すでにプーチン政権による欧州へのハイブリッド攻撃が始まっているとの認識が定着している。

これに対し、プーチンは冒頭の米ロ和平協議直前、これまでにない強い調子で欧州の軍備強化の動きへ警告を発した。いわく「欧州はトランプ大統領の和平調停を妨害し、戦争する側にいる」と。

そのうえで、「もし欧州がわれわれと戦争を突然始めたら、ロシアの反応は断固として素早い」と述べた。今後、ロシアと欧州間で緊張が高まる前触れとも言えそうだ。

この緊張の高まりは日本とも無縁ではない。日本では今、台湾有事が日本にとって集団的自衛権の行使を可能にする「存立危機事態になりうる」との趣旨の高市早苗首相の国会答弁が、中国との深刻な対立を招く事態になっている。

その渦中に、中国の王毅(おう・き)外相とロシアのショイグ安全保障会議書記は、高市首相発言を念頭に中ロ両国が共闘していくことで一致した。この共闘宣言はウクライナ情勢をめぐっても中ロが軍事協力を一層深めていく事態につながる可能性があるだろう。今後日本は中ロの共闘の行方をより注意深く見守る必要が出てきた。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。また、2024年7月9日付の東洋経済オンライン「金正恩がロシアに工兵部隊の派遣を約束した!」で、北朝鮮がウクライナ侵攻への派兵を約束したことを世界で最初に報じた。

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