一方で、ゼレンスキー政権の本音も表向きの発言とは異なると理解すべきだ。
ゼレンスキーはアメリカの和平仲介について歓迎する意向を再三表明している。しかし、これはトランプとゼレンスキーの間での異例の口喧嘩に発展した25年2月末の首脳会談の再現を避けるため、ゼレンスキーが外交的配慮を払っているためだ。実際には先述の通り、トランプ政権によるロシア寄りの仲介案には強く反発している。
「プーチンは続けられなくなる」とウクライナ軍最高幹部
ウクライナ軍は、25年夏から本格化させた原油精製工場や弾薬庫などへの軍事インフラ攻撃を強め、ロシアの継戦能力弱体化を図る構えだ。あるウクライナ軍の最高幹部も今回の米ロ和平交渉の失敗を受けて「どちらにしても今の攻撃を続けていけば、プーチンは戦争を続けられなくなる」と強気な発言をした。
先述のプーチンの軍事的勝利に向けた強気発言と合わせ、ロシアとウクライナ両国は、トランプ政権による仲介工作をよそに軍事的対決モードだ。
英仏独が率いる欧州も一段とプーチン政権への対峙姿勢を強めている。この背景にはロシア寄りの和平案を作成したトランプ政権に対し「もはや今のアメリカはわれわれの同盟国ではない」との失望感が広まったことがある。
トランプ政権はウクライナが米和平案を拒否した場合、ウクライナ向け武器の欧州への売却や衛星偵察情報の提供停止を警告している。しかし、欧州としては、こうしたアメリカの軍事支援抜きでもロシアの軍事的脅威に対抗する方向へ傾斜しつつある。



















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