この歴史的「復讐劇」の幕開けとなったのは、アメリカの一極支配という冷戦終結後の国際秩序を批判し、大国としてロシアを復活させることを宣言した07年の有名なミュンヘン演説だ。このプーチンの主張を契機に、08年のジョージア侵攻、14年の違法なクリミアと東部併合が段階的に実行され、第3幕としてウクライナ侵攻につながった。
プーチン流復讐戦略の柱の1つが反米だ。「プーチン『戦争は長期戦』とトランプ仲介に冷水」(2025年7月28日)で指摘したように、プーチン政権は西側民主主義陣営と対峙する専制的軍事国家の建設を進めている。プーチンにとって、アメリカを含めた西側との敵対関係は、侵攻を正当化し、クレムリンへの国民の結集を図るためにも必要な言説なのだ。
プーチンの時間軸はトランプよりはるかに長い
憲法規定により、望めば36年まで大統領の座にとどまることができるプーチンにとって、あと3年間で任期が終わるトランプとは政権戦略の時間軸はまったく異なる。トランプ後の米政権の外交路線がトランプ政権から大きく変わる可能性があると今から冷静にみているはずだ。
つまり、トランプ政権がウクライナや欧州の意向を無視した形で米ロという両大国主導による欧州秩序確立を図っているように見えるが、プーチン政権からすると、米ロ大国主導の秩序出現を歓迎する一方で、必要があれば、アメリカとの協調路線を放棄するという選択肢も懐に秘めていると筆者はみる。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら