『変な地図』が70万部超え!作家《雨穴》にインタビュー…その「意外な素顔」とは。"次作の構想"や"処世術"を聞いた

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――若い世代からは「Xのポストより長い文は読まない」といった声も聞こえてきます。そんな時代において、物語を届けるうえでエンターテインメントに込める思いはありますか。

Xでバズるポストが5行の文だとしたら、本当に大事なことや、その人が言いたいことは6行目より先にあるんです。ところが、5行だけ読んですべてわかった気になってしまうのがSNSの怖いところ。その状態で社会がまわれば、どんどん分断が進んでしまう。

大人の責任として、若い世代や子どもたちに、長い文章と向き合ってそこにある意を推し量るのは楽しいことだと伝えていかないといけないと考えています。

変化球のキワモノを書いてきた

――今作では、ホラーミステリーのなかにボーイ・ミーツ・ガール的な青春物語の要素があります。

今作を書き始めるときに自分に課したのが、オーソドックスというか王道の小説を書くことです。ネット出身の作家である僕は、これまで文芸や文学の世界とは対極にある、変化球のキワモノを書いてきました。

それを多くの方に読んでいただいたのはありがたいのですが、自分のなかではそういう作風=僕なりの勝ちパターンに乗ることへの迷いが次第に生まれていました。これまでのやり方をすべて変えて、新しいことに挑戦したい。それが僕にとっては、王道小説を書くことであり、今作では、昔からある普遍的な青春冒険物語を取り入れました。

――次への挑戦として、これまでの変化球と新たなオーソドックスを掛け合わせたのですね。

今は変化球しか本が売れない時代であり、王道の小説にとって不遇の時代でもあります。そんななか、時代とリンクした変化球の物語を作る僕が蓄えたノウハウに対して、ファンの方は期待していただいている。今、そこに王道の要素が加わる作品を作っても、読者に満足していただけて、商業的に戦えるのではないかと考えました。

――発売1カ月で70万部を超えるヒットになっています。

多くの方に楽しんでいただけたようで安心しています。一方、気味の悪さや怖さといった雨穴らしさが足りないという声も一定数ありました。

ただ、僕にとってよかったのは、初めてオーソドックスな分野に足を踏み入れたことで、それとこれまでやってきた奇をてらった変化球を混ぜ合わせて、よりおもしろいものが作れるのではないか、という新たなモチベーションが生まれたことです。

一番の目標は、読者全員に楽しんでいただける小説を書くこと。実現不可能な目標ではありますが、そこに少しでも近づくことができる自分なりの戦い方が見えた気がします。

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