『変な地図』が70万部超え!作家《雨穴》にインタビュー…その「意外な素顔」とは。"次作の構想"や"処世術"を聞いた

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雨穴
(撮影:川口宗道、双葉社提供)

SNS時代の息苦しさや鬱屈への反発を意識した主人公像

――栗原は独特なキャラクターですね。誰からも好かれる好青年という人物像とは異なり、クセが強い。ダークヒーロー的なキャラクター性に近い気もします。

人物を描くときの僕のルールは、正直な人間であることです。栗原は、自分が周囲にどう見られるかという損得勘定を持たない、一定の倫理観を保った素直で正直な人間として描こうと思いました。

誰もがSNSを使う今の時代は、いい人に思われないと損をしたり、炎上したりします。本心を表に出さないことがデフォルトの時代になり、それに対する息苦しさや鬱屈もたまっている。

そんなSNS時代に、みんなとは真逆の行動を取ることで、世間の風潮に風穴を開けるキャラクターでもあります。そこに爽快感や痛快感を得てくれる読者もいるのではないでしょうか。

――社会の鬱屈を映すことを狙ったのでしょうか。

そういうわけではありません。自分がこう生きたい、こう生きられたら楽なのにと考えながら作ったキャラクターなので、僕自身の鬱屈が反映された部分はあると思います(笑)。

――雨穴さんの作品には、図や箇条書きで謎を整理するイラストがポイントごとに差し込まれます。読者を1人も置いてきぼりにしない、丁寧で親切な物語の伝え方だと感じます。

YouTubeもWEBライティングも、ユーザーが少しでも話がわからなくなったり、途中で退屈だと思われたりしたら、すぐに離脱されます。その恐怖とずっと戦ってきました。

一方、小説や文学は、終わりまで読むという読み手と書き手の信頼関係で成り立っている文化でもあります。そこからは、新しい表現が育まれ、たくさんの名作が生まれていますが、そんな豊かな文化を受け継ぐ読み手が明らかに減っています。

従来の本の作り方では文化を維持するのが難しくなっているなか、僕がこれまで戦ってきたネット文化のスキルや知見は、文学という土俵で闘うための数少ない武器だと思っています。

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