米国の競馬人気は、欧州の貴族的なものよりも、幅広いものだ。ケンタッキー州を中心に南東部の生産が盛んであると同時に、競馬レースの施行においても、東部、西部、中西部、南東部と各地でそれぞれ力を入れて(州ごとに施行団体が異なり、また、制度、ルール、薬物使用規定なども異なる)行われており、レースの総数が非常に多い。
最近低下傾向にあるのは、スポーツベッティングという強力なギャンブルのライバルが現れたため、馬券の人気が落ち始めたからである。ケンタッキーダービーなどの祭典としての盛り上がりは低下していないが、やはり馬券売り上げは根幹であり、将来見通しは必ずしも明るくない。
日本が盛り上がれるのは、社会がすばらしいから
つまり、オーストラリアを除けば、欧米の競馬は右下がり傾向にある。その中で、なぜ日本だけが盛り上がっているのか? しかも、すでに世界最大の市場であるにもかかわらず、1997年にJRAの馬券売り上げ(売得金額)が4兆円を超えた後、減少傾向が続いたのに、2012年から急回復している(地方競馬の売り上げはさらに急回復。これらは非常に難しいことだ)。いったいなぜなのだろうか?
それは、ファン層の広さと深さと多様性が断然優れているからである。日本の競馬ファンの特徴は、非常幅広く、老若男女、貧富の差、さらには学歴の差に関わらず、多くの人々に受け入れられているからである。競馬に対するイメージ、社会における寛容性が(オーストラリアと並んで)高いからである。
では、なぜそうなったのか? 日本社会がすばらしいからである。どのように?それは、貧富の差なく、さまざまなイベント、趣味を愉しめる環境が整っているからである。その環境とは、社会の寛容性であり、今風に言えば、インクルーシブネスである。同時に、弱者に対する慈しみ、共感が強く、判官びいきでもあり、すなわち、弱者に優しく、応援する社会であるからである。
これまで日本には、競馬ブームが4回訪れた。1回目は1972年からのハイセーコーブームである。ハイセーコーとは、地方競馬から勝ち上がり、中央競馬でも無敗のまま、クラシックの皐月賞を勝った馬で、とてつもない社会現象になった。地方の野武士が中央のエリートに挑んで打ち負かすというストーリーに人々は熱狂したのである。鞍上の増沢末夫騎手が歌う「さらばハイセーコー」というレコードまで発売され、約50万枚も売り上げた。
2回目は1990年のオグリキャップと武豊騎手である。オグリは「ハイセーコーの再来」と、同じような「地方から中央へ」というストーリーで盛り上がり、ぬいぐるみがバカ売れした(私も当時妻にもらった)。同時に、競馬騎手が大スター扱いを受け、前年から男性アイドルでデビューしそうな松永幹夫騎手(現調教師)の人気に続き、武豊騎手が大ブームを起こした。女性ファン、子供のファンが急増した。
3回目は、時期は重なっているが、ファミコンソフト「ダービースタリオン」が大ブームとなり(私はこのためだけにファミコンを買った)、しかも、これはギャンブルやレースとしての競馬ではなく、競走馬生産育成ゲームであったため、競馬の別の側面に関するブームを若者の世界に広げた。
4回目が2020年からの「ウマ娘」ブームであり、これはゲームアプリ(育成、生産)とコンテンツのメディアミックスであり、「推し活」の要素を含み、大成功を収めた。この還元と言って、「ウマ娘」制作会社グループのサイバーエージェント社長の藤田晋氏は、念願の馬主活動を開始し、日本の競走馬セールで、もっとも購買額の大きい馬主の一人となっている。



















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