大河「べらぼう」同志だけど相対し…松平定信がロシアからの蝦夷地防備策で本多忠籌と意見を異にしたワケ

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(写真:J-Climber / PIXTA)
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今年の大河ドラマ『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』は横浜流星さんが主演を務めます。今回は田沼意次から大きく方針転換した老中・松平定信の蝦夷地政策を解説します。
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定信が蝦夷地開発を中止したワケ

田沼意次の時代には、ロシアの接近に伴い、蝦夷地(北海道)を徳川幕府が直轄地にして開発しようという「蝦夷地直轄開発論」が持ち上がっていました。しかし、田沼一派が失脚し、幕府老中に松平定信が就任したことにより、蝦夷地への政策は転換します。定信は蝦夷地開発を中止したのです。なぜか? 定信の自叙伝『宇下人言』の言葉に耳を傾けてみましょう。 

定信は言います。「蝦夷という国は、とても広大なところであるので、世間の人々の中には、米穀を植えてその国を拓くべしという者が多い。だが、天がその地を拓いていないことこそ、有り難い。今、蝦夷の人々に米穀(農業)のことを教えたら、外敵の侵入を招くことになるだろう。とても恐るべきことだと建議して(開発計画は)中止となった」と。

つまり、蝦夷地の開発計画や、アイヌの人々に農業を教えることは、ロシアという「外敵」の侵入を招く危険があるというのです。当時のことわざに「北風や日本の火よけ蝦夷が島」というものがありました。

「北風」はロシアを指します。蝦夷地という広大な大地が、ロシアと日本との間にあり、ロシアの南下を防ぐ緩衝地帯となる。蝦夷地は火除け地(火災の延焼を防ぐために設けられた空き地のこと)だというのが、前述のことわざの意味です。

そうした緩衝地帯(火除け地)があるのに、その蝦夷地を日本が開拓してしまえば、緩衝地帯が無くなり、日本とロシアが直に接することになる。これは危険だというのが、定信の考え方でした。

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