若手が「プロジェクトで大きなトラブル」 そのとき有能リーダーが"明るくふるまった"大きな理由
また、『失敗の本質戦場のリーダーシップ篇』(野中郁次郎編著 ダイヤモンド社)でも、リーダーシップの本質とは「現場感覚」「大局観」「判断力」であるとのこと。
人事を尽くして天命を待つ、そして最後は楽天的に。そういったものの考え方が重要であると思います。
普段から現場に顔を出していると、試験の実施手順などについての理解が深まります。またメーカーからも「この人は普段から作業現場に立ち会っていて、我々の言うことを理解してくれる人だ」と認めていただけると、共通理解が進み、建設的な意見交換ができるようになると思います。
約30年前の映画『踊る大捜査線 THE MOVIE』で「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ」という名言がありましたが、まさしくその通り。人工衛星も会議室では何も作れません。
プロジェクトマネージャとして、これまでの慣例を修正したり、新たな取り組みを導入したりといった、痛みを伴うような調整を行う必要がある時にも、このようなメーカーの作業者との信頼関係を構築することはとても重要です。
作業現場でモノ作りがなされ、試験現場でその品質を厳しくチェックする、それを担当するのも一人一人の作業者。
私がいつも思い出すのは、ホンダの創業者・本田宗一郎の「技術者は技術の前で平等である」という言葉です。皆、このことを忘れてはいけません。
自分で全てを把握することはできない
若い頃に担当した衛星でこんなことがありました。
打上げを控え、人工衛星を射場である種子島に輸送し、最終のチェックを行っていた時のこと。順調に進んでおり、JAXAもメーカーの作業者も、おおかた執務室に引き上げて、ゆっくりと談笑していました。そんな時、ベテランの作業者が神妙な顔つきで報告に来たのです。
「なんだか、異音がする」
再び全員で作業エリアに行き、確認すると、確かにモスキート音のような高い高周波の音が聞こえたのです。原因究明を進め、ある電子機器が発振していることが分かりました。そこから大急ぎで機器を交換し、無事打ち上げることができました。



















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