『原発不明がん』発症した夫がわずか160日で他界、救うすべはなかったかーー。妻が主治医にぶつけた「最大の疑問」と受け入れ難い"答え"

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こんなに急激に悪くなってしまうがんがあることに驚き、信じられない気持ちだと訴えると、

「東さんの場合、多分1年か、あるいはもっと前から、じわじわと症状が出ていたのではないかと推測できます。ただ決定的な不調にはなっていなかった。そのままやり過ごすうち、少しずつ悪化して、ある閾値を超えたとき、ドンと症状が出たのだと思います。がんという病気が怖いのはそこで、初期に見つかるものばかりではないということなんです」

医師からみた『がん』とは、どんな病気?

この手のがんを早期発見することは不可能なのか。

「毎年定期健診を受けていたのに、という患者さんは多いです。東さんもそうですよね。進行性で非常に特殊ながんの場合、通常の健康診断ではまず見つかりません。自分はがん治療に特化した特殊な病院の腫瘍内科医なので、他では見つからなかった珍しい進行がんの患者を診ますから、どんながんでも驚きません。

でも毎日特殊ながんの患者ばかりを診ていると、健康診断や人間ドック、あるいは消化器内科や婦人科などの一次医療で発見された早期がんと、自分が診ているがんは、違う病気を相手にしているような感じがしています」

私は納得がいくまで話が聞きたくて、こう訊ねてみた。「先生から見たがんとはどんな病気なんですか」。

奥屋医師は少し考えて、こう答えた。

「一般的な病気のイメージは、軽い症状から徐々に重症化して死に至るというものでしょう。でもがんは違うのです。本人がほとんど何も感じていなかったにもかかわらず、突然倒れることが珍しくありません。がんが発見されてから数週間、ひどいと数日で死に至ることだってあります。東さんの場合、私のような専門医から見たら、残念ながら実はそれほど急激な変化とはいえないのです」

さらに言えば、と奥屋医師は続けた。

「すでにがんで入院している人を医師が毎日診療していても、進行状態を見極めるのは非常に難しいのです。よく、余命はこれくらい、とドラマなどでは簡単に言いますが、残された時間を伝えるのは専門医でも躊躇します。昨今では毎日のバイタルや血液検査、全身状態、そして集積されたデータによって昔より正確に判断できるようになりましたが、最終的に残された時間が推定できるのは、長くて数週間、通常では数日単位です」

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