東急電鉄が取り組むO2Oによる街づくり(前編)《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》
iPhoneアプリ版では、3次元位置情報を活用したAR(Augmented Reality:拡張現実)機能も取り入れた。ARとは、たとえば、画面に映した現実の画像にデジタル情報を重ねて表示するような技術だ。
ニコトコアプリでは、カメラをかざした方向にクーポンが使える店舗があれば、カメラに映った街中の風景に店舗アイコンを重ねて表示するサービスを提供した。フロア階数の高い店舗ほど、画面の上部に表示される。
東急電鉄、都市開発事業本部企業統括部企画開発部の企画担当を務める福島啓吾氏は、「ロケーション・クルーズ・プロジェクト」の舞台が、二子玉川である理由は3点あると語る。
「1点目は、コンソーシアムがあること。1社だけで街はつくれない。さまざまなプレーヤーが参加してつくる街のほうが楽しい。また、二子玉川のショッピングセンターのメインターゲットは30~40代女性。生活者が多くいる場所で実利用に近い展開ができることも大きい。以前展開していた渋谷では、20代男性の利用者がほとんどだった。3点目は、プロジェクトのテーマが『屋内』という点だ。商業施設など屋内空間が多くあることも適している」
また、福島氏はニコトコの参加店舗側の反応を話す。
「各店舗で販促費を出し合いショッピングセンター全体でクリスマス販促を実施するのと同様に、IT系のサービスもみんなで力を合わせるほうがパワーを発揮する。特に商店街のお店などはなかなか自分たちだけではITの取り組みは難しい。スタンプラリーなども興味はあったができていなかったのでさらに取り組みを深めていきたい、というお話をいただいている」
ニコトコは12年3月末で終了した。利用者は、4カ月間で4000人弱。二子玉川居住者や通勤者が多いという。「街」を切り口にしたアプリはあまりない。自分の街のアプリなら使ってみたいという、帰属意識から利用する傾向があるようだ。今後は、改良を加えてよりサービスを深め、イベントごとに実施する展開だという。
今後への課題を福島氏は次のように話す。