中国は自由で開かれた貿易の守護者になったのか? 世界経済の主導役はアメリカだったはずだが、いつの間に中国にその座を奪われていた
ただ中国がアジア太平洋地域において覇権主義的な姿勢を打ち出し、製造業分野で支配的地位を築き、貿易紛争の際には輸出管理などの行使を辞さないだけに、多くのアジア諸国は今回の中国による多国間主義支持にも警戒の目を向ける。
一方、トランプ氏のAPEC首脳会議欠席という決断は、米国が冷戦後に貿易を通じてアジア太平洋経済を発展させる目的で自身も創設に関わったこの枠組みへの対応を劇的に転換したことを物語る。
「米国第一主義」を掲げるトランプ氏は今年4月に「相互関税」を発表して世界を動揺させただけでなく、ほとんどの国・地域と二国間交渉によって米国の要求を押し通して多額の投資を約束させ、不満な場合には関税を引き上げてきた。
APECのような多国間外交を軽視するかのように、トランプ氏がアジアから戻った直後に出席した行事はホワイトハウスでのハロウィーンイベントだった。
メッセージだけでなく具体的な行動も
こうした中で国内の成長低迷や米国との貿易摩擦に直面する中国は、トランプ氏の政策がもたらす不確実性を巧みに利用し、外交活動を展開したり、世界各地の市場での地歩の拡大に動いたりしている。
国際貿易の地図の書き換えは中国にとって単なる戦術的な施策ではなく、長期戦略を意味する。中国指導部が発表した「第15次5カ年計画(2026-30年)」の基本方針にも「多国間貿易システムを守り、より幅広い国際的な経済の流れを促進する」ための手法が盛り込まれた。
中国はメッセージだけでなく具体的な行動もしている。李強首相がマレーシアで先週開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に参加し、中国とASEANの自由貿易協定を更新する取り決めを結んだ。

















