中国は自由で開かれた貿易の守護者になったのか? 世界経済の主導役はアメリカだったはずだが、いつの間に中国にその座を奪われていた
10月30日の米中首脳会談終了後すぐにトランプ米大統領は韓国・釜山の空港から専用機で帰国したのに対して、中国の習近平国家主席はそこから80キロほど離れた慶州で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に足を運んだ。
さっさと米国に戻ったトランプ氏と、APECという多国間外交の祭典に向けて腰を落ち着けた習氏。この2人の首脳の動きが象徴するのは、世界経済の主導役の交代だ。トランプ政権下の米国外交にとって今や、このような会議は「付け足し程度」の存在に過ぎない。
これは、世界で最も急成長し、トランプ氏の関税措置で揺さぶられた重要なサプライチェーン(供給網)拠点でもあるアジア太平洋地域に対する影響力行使の争いに起きた変化も端的に表している。
米国第一と多国間主義支持
米国が貿易障壁を導入し、二国間の取引を重視するのと対照的に、中国は自らを「自由で開かれた貿易の予測可能な旗手」として演出する。それこそが米国が数十年担い続けてきた役割だった。
習氏は、トランプ氏不在のAPEC首脳会議の冒頭、世界貿易機関(WTO)に言及して「われわれは本当の多国間主義を実行し、WTOの核心部分となっている多国間貿易システムの権威と実効性を強化するべきだ」と訴えた。
その上で「時代の変化を反映する形に国際経済・貿易ルールを改正し、途上国の利益や正当な権利をより適切に保護する」よう呼びかけた。

















