バレエを"やらない人"が老舗バレエ用品メーカー「チャコット」で買い物をする理由 今やバレエだけじゃない意外な成長柱
「長年ファッションビジネスに携わってきた身からすると、外から見たバレエは芸術として非常に高尚で、憧れの対象。海外のコレクションでもしばしばテーマにされる存在です。ただチャコットに来て感じたことは『バレエには少し壁がある』ということ。
言い換えると、一般の人たちにとってはハードルが高い、自分には関係ないと思われがちだった。そこで、創業70周年を迎える20年を機にこれまでのクローズな体勢から、もっと社会に開かれたオープンなブランドに変わっていこうと考えた」(馬場氏)
まず取り組んだのが、ブランドを統一させ、再定義を図ることだった。
「チャコットを単なる営利企業ではなく、『企業=ブランド』として確立させたかった。就任直後に創業者にもお会いし、創業当時の思想や哲学を伺いました。創業者のビジョンは『舞台だけではなく、街そのものをステージにする』。当時の文献を精読していると、将来、渋谷の街をレオタード姿で歩く時代が来るのではないかという言葉もあった。このビジョンを引き継ぎ、もっと多くの人に素晴らしさを届けたいと思いました。
チャコットが持つプロフェッショナリズムやブランド資産を開き、社会全体につながる存在にしていく。それが『クローズからオープンへ』の出発点でした」(馬場氏)
ピンクを基調としたロゴに統一
そして、社是であった「芸術とともに生きる」をより広い意味で捉え直して、新しいブランドフィロソフィー「人生を、芯から美しく。」が誕生した。
さらに、それまではコスメ、バレエ、新体操など、それぞれのカテゴリーごとにロゴやデザインはすべてバラバラだったが、「チャコットというブランドを1つの記号として統一し、どの分野でも同じ印象を持ってもらえるようにした」(馬場氏)。
その象徴的な第一歩として、20年にピンクを基調としたロゴに統一。商品パッケージ、購入した商品を入れるショッパー、名刺などすべてを刷新した。
とはいえ、20年は世界中がコロナ禍の只中だった時期だ。
コロナ禍において、他の舞台芸術同様、バレエもほとんどが上演中止に追い込まれた。商業舞台公演だけではない。子どもたちの発表会もホールで開催できない。20年7月には、1963年創業のバレエ用品製造販売を手掛けていた老舗メーカーが破産した。バレエ人口が減少する中、先行きはさらに不透明だったといえるだろう。


















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