高倉健の「鉄道映画」は、不朽の名作ばかりだ 一周忌に振り返る「あの映画のあの名場面」

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シリアスな人間ドラマと鉄道をリンクして描いた「駅 STATION」(1981年降旗康男監督)では、冒頭「1967年1月 直子」のタイトルが流れる雪の函館本線・銭函駅を貨物列車が通過していく。次のシーンでは雪の銭函駅で妻直子(いしだあゆみ)と警察官・英次(高倉健)の別れの場面、札幌方面のホームに電気機関車ED76形500番台の牽く旅客列車が進入してくる。

「駅 STATION」に数多く登場した増毛駅

客車は「狭窓」のスハフ32形。別れの悲しさを笑顔に変えて、開いたデッキで見送る夫に敬礼して列車は札幌方面に向かう。客車列車のゆっくりとした発車シーンは別れの余韻を長く残してくれる。

同作品は倉本聰が高倉健のために書き下ろしたという脚本を元に映画化され、北海道を舞台に物語が展開された。ロケは銭函駅を始め留萌駅、増毛駅、上砂川駅で行われ、ラストシーンの美しい夜景の増毛駅は名手、木村大作カメラマン必撮の名シーンだった。

山田洋次監督は蒸気機関車ファン

「男はつらいよ」「家族」で知られる山田洋次監督と高倉健との出会いは「幸福の黄色いハンカチ」(1977年松竹)が最初の映画である。

山田監督は熱心な鉄道愛好者、とりわけ蒸気機関車のファンで、近年には復活した「C61」をドキュメンタリータッチで映像化している。特に監督の代表作のひとつ「遥かなる山の呼び声」(1980年松竹)では、標津線上武佐駅など沿線でロケが行われ、ラストシーンは指名手配犯・田島耕作(高倉健)が網走に護送される場面で締めくくられる。民子(倍賞千恵子)との刑事を挟んでの無言の別れと約束。列車は同区間を走る急行「大雪」として設定された。

「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台となった幾寅駅

「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年降旗康男監督)は、廃止間近の北海道のローカル線の終着駅の駅長の鉄道人生物語で、国鉄のカマ焚き、機関士からの叩きあげの「鉄道員」を描く名作の鉄道映画。

主人公の駅長佐藤乙松を高倉健が演じている。劇中のローカル線は「幌舞線」で行き止まり式の「盲腸線」である。もちろん線名も「幌舞駅」も架空の路線で、ロケは根室本線「幾寅駅」で四季折々に撮影された。

私は「大いなる旅路」と、この「鉄道員(ぽっぽや)」を見て気がついたことがある。あのローカル線の小駅で生涯を終える駅長こそ、「大いなる旅路」の静夫(高倉健)の姿ではなかろうかと。40年近くの時間の経過もほぼ一致する。この両作品は高倉健が演じてきたぽっぽや人生のすべてではなかったのか? そんな勝手な解釈で健さんを偲んでいる。

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