ワールドシリーズで大活躍する大谷翔平選手の人生を変えた「1枚の表」を知っているか

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大谷選手と両親は、大渕さんたちが置いていった『夢の道しるべ』を読み込んだといいます。『道ひらく、海わたる』でお父さんがこう話しています。

「翔平自身もいろいろと調べたと思いますが、調べきれない、自分で理解しきれないことがあの資料や説明にはありました。気づかされたことがたくさんあったと思います。あっち(アメリカ)に行くことも悪くはないんですけど、『急がば回れ』というんですかね……。まずは日本でやってからアメリカへ行ったほうが成功する確率が高いという説明もしていただきましたので、考え方が少しづつ変わっていきました」

そうした中、交渉の終盤になって、当時の栗山英樹監督が「投打の二刀流で育成する方針」を明らかにします。

大谷選手にとって投手も打者もできるというのは、想定になかった画期的なアイデアだったそうです。もし高校卒業後にアメリカに行っていたとしたら、おそらくバッティングはやっていなかったと後日、大谷選手本人も語っています。

繰り返しのすごい効果

前人未到の投打二刀流に挑むパイオニアになれるかもしれない――。それは、表で1つだけ空欄だった場所に、満点の5点がぱっと灯ったようなインパクトだったのではないでしょうか。

実際、この欄に5点を入れてみると、NPB(二刀流)は33点。MLB(この時点ではピッチャーとして)の27点を大きく上回ります。どうでしょう、大谷選手の気持ちが日本ハムへぐっと傾いた理由が、手に取るようにわかりませんか。

(出所)『人生で必要な決め方はすべて「進路選択」で学べる』

このように、表が選択を“見える化”してくれる効果は計り知れません。解像度が上がるといってもいいでしょう。

アメリカの認知科学者でありデザイン研究者のドナルド・A・ノーマンが書いた『Things That Make Us SMART』という本があります。ノーマンはこの中で、人間は元来記憶や思考・推論の能力をその過程を補助する道具を作り出し、繰り返し使用することで増強してきたと指摘しています。

表も、思考を補助する「道具」にほかなりません。

就職、転職、結婚、引っ越し、終活……生きていると、しばしば大きな選択に迫られます。そんなとき、頭の中だけでこれだろうか、いやあれかと考えていてもなかなかうまくいきません。そこで、紙とペンを取り出して書き出してみると、こんがらがっていた糸がみるみるほぐれることがあります。表は、何かを選択し、判断し、決断するうえで最高で最強の道具なのです。

今年のドラフト会議でも、スタンフォード大学に所属する佐々木麟太郎選手がソフトバンクホークスから指名されました。アメリカに残るのか、ホークスに入団するのか、はたまた第三の選択肢はあるのか。その進路選択を考える上でも大谷選手の決断は役に立つでしょう。

山口 大輔
やまぐち だいすけ / Daisuke Yamaguchi

(学)河合塾学校教育サポート本部学校事業推進部部長
日本大学文理学部卒業。1996年河合塾入塾。営業として東京都内の高校を担当。2002年より名古屋大学との共同研究に参画しテスト理論を学び、新商品開発に携わる。その後、模試事業企画を経て2009年より新規事業企画に従事。『ミライの選択』のほか、非認知能力や職業適性を測るアセスメントテスト『学びみらいPASS』などの開発に携わる。

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山本 尚毅 HONZ

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やまもと なおき / Naoki Yamamoto

(株)日本総合研究所創発戦略センター所属
北海道大学農学部卒業。20代は社会起業家として、デザインを通じた貧困問題の解決に挑戦。2015年河合塾入塾、未来研究プログラムを担当し、『ミライの選択』の開発をリードした。2023年より現職。著書に『もし未来という教科があったなら』(共編、学事出版)。

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