「世界シェア7割」を誇るKOKUSAI ELECTRICの"魔法の成膜技術"とは?

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また、膜のトリートメント装置では世界シェア2位を誇る。トリートメントとは、成膜後にプラズマや加熱により膜の改善を行う作業のこと。膜から不純物を取り出したり、粒子を安定させ強固にしたりする。同社の装置は複雑な構造のデバイスでもムラなく、均一にトリートメントができる。

KOKUSAIのルーツは、1949年に電気通信機器および高周波応用機器の製造販売を目的に設立された国際電気だ。同社は1956年に「ゲルマニウム・シリコン単結晶引上装置」を受注し半導体製造装置事業に舵を切った。

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2000年に国際電気・日立電子・八木アンテナが合併し、日立製作所傘下の日立国際電気が誕生した。

日立グループの一員として半導体製造装置事業を展開したが、親会社である日立製作所は社会インフラ事業に傾注する一方で、事業ポートフォリオの見直しを実施。日立製作所は日立国際電気の全株式を米国投資ファンド・KKRへ売却した。

2018年に日立国際電気が成膜プロセスソリューション事業を会社分割し、これがKOKUSAI ELECTRICとなった。

その後、KOKUSAIは成膜だけでなく、成膜の前後の工程も取り込んだ装置開発を目指し、半導体製造装置で世界首位の米国アプライド・マテリアルズとの経営統合を試みた。

2019年中にアプライドがKOKUSAIの全株式をKKRから22億ドルで取得する計画だったが、中国政府の承認を得ることができず経営統合は破談となってしまった。

中国としては米国企業の市場シェア拡大を認めるわけにはいかなかった。また、KOKUSAIが米国企業傘下になれば、装置の購入がより困難になる懸念もあったと見られる。

破談以降は、上場を目的に努力を重ね、2023年10月に東証プライムへの上場を果たした。

上場によって取引先からの信頼が増すだけでなく、採用面でもメリットがある。上場時に金井史幸社長(当時)は、「当社は工場がある富山県ですら知名度が不十分。上場企業であれば学生に来てもらいやすくなる」とコメントした。

回路線幅はウイルスよりも微細に

半導体の歴史は微細化の歴史だった。台湾TSMCや韓国サムスン電子が開発を進めている「3ナノ」や「2ナノ」といった回路線幅は、ウイルスよりはるかに小さく原子のレベルだ。

微細で複雑な半導体では非常に細く深い溝の中へきちんと膜を埋め込んでいかなければならない。KOKUSAIの「バッチALD方式」成膜装置の需要は高まるばかりだ。

同社は2025年3月期に2389億円だった売上高を中期的に3000億〜3300億円にする目標を掲げている。具体的な時期は明らかにしていないが、世界的な半導体需要の高まりによって遅くとも2029年3月期頃には目標を達成すると見られる。

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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