「国立競技場」→「MUFGスタジアム」でどう変わる? "ONE OK ROCK単独公演"の誘致に見る本気度
2026年4月にはドコモ主催でONE OK ROCKが参加する「THE MUSIC STADIUM 2026」を開催する。国立競技場でのロックバンド単独公演は初めてとなる。
ドコモの存在感、海外に学ぶべきICT活用
構成企業にNTTドコモが入っていることから、ICT活用への期待は高かった。前田義晃社長は「リボンビジョンを1層と3層に増設する」計画を発表した。現在のリボンビジョンと館内デジタルサイネージを連動させた統合演出も検討中だという。
複数会場を接続するライブ構想も語られた。IOWN(次世代光通信網)を使い、ドコモが保有するIGアリーナ、有明アリーナ、GLION ARENA KOBEと国立を結び、5万人規模を10万人、15万人に拡大するという。ただし、実装時期や具体的な計画は示されなかった。
民営化から半年という段階で、詳細な技術仕様まで固まっていないのは仕方がない面もある。それでも、海外の先進事例と比較すると物足りなさは残る。例えば、アメリカのSoFiスタジアムでは70000平方フィートの両面LEDスクリーンでリアルタイムの試合データを表示し、イギリスのトッテナム・ホットスパー・スタジアムではスマホアプリから座席での注文・決済が可能だ。ドイツのアリアンツ・アレーナでは来場者の動線をAIで分析し、混雑緩和に活用している。
国立競技場でも、リアルタイムのスコア表示やAR技術を活用した観戦体験、完全キャッシュレス化など、来場者が体感できるサービスの具体像がもう少し見えてもよかったのではないか。
竹内社長が力説したのは天然芝の管理技術だった。地中に温水パイプを通して地温を調整するシステム、グローライトによる日照補完、送風機での湿度管理。確かに国内では珍しいが、欧州では10年以上前から当たり前の技術だ。
むしろ注目すべきは、音楽イベント後に芝を全面張り替える決断だ。「国立の歴史で初めて」と竹内社長は胸を張った。芝の張り替えには数千万円かかるとされる。それでも音楽興行を優先する判断は、収益確保への切実さを物語る。
20日前に冬芝の種をまいたばかりという芝生は、確かに美しい緑色をしていた。だが、この芝を維持するコストと収益のバランスは成り立つのか。答えは数年後に出るだろう。
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