健康情報のウソ・ホント!「なんだか体調が優れない」原因は体温調節の機能不全?

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標準体温群の子どもたちは、昼の12時から体温がピークになりますが、低体温群の子たちは夕方18時がピークになります。極端な話、半分眠った状態でずっと活動しているわけですから、意欲やパフォーマンスが下がるのも当然です。

実際に、スポーツのパフォーマンスとの関係を調べたデータもあります。

25名(女性13名、男性12名)の競泳選手に、丸2日間にわたり200mの競泳タイムと体温の関係を調べました。すると競泳タイムは体温に比例しており、1日の中で体温の高い時間帯が、より競技成績が良いという結果になりました。

体温が高いとスポーツのパフォーマンスが向上することについて、勉強や仕事、日常生活においても同じことが言えます。

逆に、体温が低いときは、体が何らかの不調を抱え、悲鳴を上げている状態だと考えられます。「防衛体力」は測ることができませんが、ある意味、体温は防衛体力を表す、非常に意味のある指標でもあるのです。

頑張る人ほど要注意! オーバーヒートの落とし穴

なぜ体温リズムが狂ってしまうのか。これにはいくつか理由が考えられると思いますが、本来人間が持っているリズムが先天的に狂っているという人は、ほとんどいません。

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高体温の人でも低体温の人でも、日中にピークになり夜は下がるというリズムは同じです。低ければ低いなりに相似形になるので、夕方に体温のピークになるというのは、後天的な原因が考えられます。たとえばスマホの使いすぎで、夜中目が爛々として朝起きられなくなる、というようなことがその理由だったりします。

学生に限らず、社会人で出勤意欲がなかったり、主婦で午前中は家事をしたくないという人は、この体温のサーカディアンリズムが狂っている可能性が高いのです。

また、反対に午前中に体温が高くなるパターンの人もいます。たとえば、毎日ものすごくハードに勉強している子どもは、午前中の体温が高いのです。これは、体が過剰に興奮しているからです。

勉強を頑張っていると、親や先生は安心するかもしれませんが、勉強のしすぎは疲労につながります。夜型生活をしていないから良いというわけではありません。大人も朝からエンジン全開で仕事をしているとリズムが狂ってしまいます。

この状態をスポーツ選手の場合はオーバートレーニング症候群、仕事をしている人はワーカホリックと言ったりしますが、過集中はサーカディアンリズムが崩れ、慢性疲労症候群をひき起こしますので注意が必要です。

疲れがたまれば、免疫力が弱まり、風邪もひきやすくなります。

杉田 正明 日本体育大学 体育学部 教授/ハイパフォーマンスセンター長 「コンディショニング・イノベーション Lab」全体統括。

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すぎた まさあき / Masaaki Sugita

1966年生まれ。1991年3月、三重大学大学院修了。同年5月より東京大学教養学部助手、1999年4月より三重大学教育学部助教授、2011年4月に同教授を経て、2017年4月より現職。専門はスポーツ科学(運動生理学、トレーニング科学、バイオメカニクス)。トップアスリートの競技力向上を目的としたトレーニングやコンディショニング、環境適応に関する研究と実践を続けており、スポーツ医科学の視点から競技現場を支えてきた。

現在は、これまでの豊富な経験と科学的知見をもとに、トップアスリートの健康マネジメントを一般にも広く応用することを目指し、エビデンスに基づいたコンディショニング手法の普及・発信にも力を注いでいる。

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