ノーベル経済学賞はイノベーションが主導する経済成長を解明した3教授に授与、なぜ1820年に突如として経済成長が始まったのか?

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
スウェーデンの王立科学アカデミーは13日、2025年のノーベル経済学賞をジョエル・モキイア氏、フィリップ・アギヨン氏、ピーター・ハウイット氏の3人に授与すると発表した。「イノベーション(技術革新)主導の経済成長の解明」が授賞理由。13日撮影(2025年 ロイター/Tom Little)
スウェーデン王立科学アカデミーは10月13日、2025年のノーベル経済学賞にノースウェスタン大学のジョエル・モキイア氏、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のフィリップ・アギヨン氏、ブラウン大学のピーター・ハウイット氏が選ばれたと発表した。イノベーションが経済成長を生み出す役割に関する研究で功績を挙げたことが授賞理由だ。
審査委員会によると、「技術進歩を持続的な成長の前提条件として特定した功績」により、モキイア氏が賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億7600万円)の半分を受け取る。残りの半分は、「創造的破壊を通じて持続的成長を説明する理論」により、アギヨン氏とハウイット氏が共同受賞した。
アギヨン教授が行った連続講義をまとめた書『創造的破壊の力:資本主義を改革する22世紀の国富論』の邦訳のうち、「成長のテイクオフの実現には科学的な知識と実用的な知識との相互作用が必要」というモキイア教授の指摘について講義した箇所を抜粋してお届けする(本記事は2022年12月30日配信の「1820年、突然経済が急激な成長を始めた納得理由」を再構成した記事です)。

成長のテイクオフは1820年に始まった

経済成長の歴史における真の断絶は、1820年にある。つまり、たかだか200年前だ。

フィリップ・アギヨン教授(写真:同氏のホームページより)

今日では1人当たりGDPは増えて当たり前のように考えられているが、人類の歴史を俯瞰すれば、それはごくごく最近になって始まったのである。

18世紀末から途切れなく続いた右肩上がりの成長が、経済成長の歴史において最初の注目すべき現象であることはまちがいない。

今日からみると、18世紀の生活水準はもはや想像もできない。とりわけ住居、栄養状態、公衆衛生に関してそう言える。

19世紀までは珍しくもなかった平時における餓死や凍死は、先進国ではほぼ姿を消した。

人口動態も劇的に変化する。17世紀には、新生児の25〜30%が1歳になる前に、50%が20歳になる前に死んでいた。

今日では、欧州連合(EU)加盟国における乳幼児死亡率は0.4%未満である。

1820年まで世界の成長と人口がともに停滞していたのはなぜだろうか。ヨーロッパは中世の頃から重要な発明発見の舞台だったのに、成長のテイクオフはなぜ1820年に始まったのか。

次ページテイクオフの原動力となったのは何か
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事