「家庭料理は時短・中食化が進むけれど…」。製菓・製パン材料など1万点超の品ぞろえ、"作る人"のニーズを見逃さない富澤商店の戦略
富澤商店が求めるのは、手作りの裾野を広げることだ。そのために専門家チームを結成した。
「2020年から店舗併設のレンタルキッチンスペースを3カ所で運営。このスペースでのイベント講師を任せるため、経験とスキルがある社員を迎えました。各店舗での試食・接客対応、インスタライブの配信などを担ってもらっています」(原事業部長)
試食で伸びたのが、同社オリジナルのパン用スプレッド「ピーナッツきな粉クリーム」。今は店頭の目立つところに並べている。パン用のスプレッドも流行中だが、同商品は試食販売を始めて1年で、前年の1.5倍も売れた。

また、豆菓子やスナック類も目立つ場所に並べたところ、特に近隣に大企業の本社が多い丸ビル店で、男性が買いに来るようになった。
それとは別に、コロナ前頃から手作り用の材料を求める男性客も増え始めている。富澤商店の中心顧客はもともと、40~60代女性が中心だ。顧客の幅は、着実に広がってきた。

手作りを楽しむ人たちはたくさんいる
17年に同業のクオカプランニングの事業を譲渡された富澤商店。自由が丘のクオカスタジオでは、プロの職人や講師による料理教室も始まった。
「製菓・製パン専門店ならではの本格的な材料や道具を使用。広々とした快適な環境で、集中して学べることから、予約困難になるほどご好評をいただいています」(原事業部長)
多摩ニュータウンの一角に本社を移したことは、人手不足の昨今、優秀なパート人材を獲得するうえでも役立っている。多摩ニュータウンには、子育て中心の生活を守り、職住近接で働きたい女性が多いからだ。
専門店の強みは、初心者からベテランまでいるその世界の顧客が求める情報を、的確に出せることにもあるはずだ。そして、家庭料理の手作り離れが進む今でも、趣味的な製菓・製パンの世界では、手作りを楽しむ人たちがたくさんいる。
そうでなければマニアックで高品質な品ぞろえが成立するはずがない。顧客とのコミュニケーションに力を入れ始めた富澤商店は、もしかするとこれから、新しい手作り料理の世界を構築していくのかもしれない。

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