クラフトチョコの旗手、日本上陸計画の内幕 チョコ界のサードウェーブがやって来る!

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カフェで販売するチョコレートドリンクやケーキは、ファクトリーで練り立ての新鮮なカカオで多彩なメニューが作られる。一部メニューはサードウェーブコーヒーの雄「フォーバレル」とのコラボ

その結果生まれたチョコレートバーは、見た目こそ普通のチョコレートバー。しかし、口の中に入れると驚くほど香りとコクに溢れた、しかも産地ごとの個性が際立つ、これまでにないチョコレートになった。ファクトリーカフェでは、毎日作られたチョコレート原料から多様なケーキやチョコレートドリンクが作られている。

そのうちのひとつ「Mission Hot Chocolate」を頼んでみると、甘さはごくごく控え目。しかし、スパイスがほどよくブレンドされた大人の飲み物となっていた。

なるほど、米国のBean to Barムーブメントの中でも、そのコンセプトのストイックさと知名度の拡がりでトップランナーと言われるだけの事はある。彼らは旗艦店のチョコレートファクトリーだけでは生産が間に合わず、より大きなチョコレート工場を建設するため500万ドルを調達。”少量生産プロセス”はそのままに生産量を拡大させ急激に増える需要に応えようとしている。

何も知らずに彼らのファクトリーショップを訪れた筆者は、その味、香り、雰囲気、それにストイックに品質を追い求める姿勢にすっかりノックアウトされてしまった。

もっとも、こうした話だけならば記事にはしていなかっただろう。筆者が興味を持ったのは、彼らが日本市場への進出計画を持っていたからだ。日本にもクラフトムーブメントが押し寄せている昨今、日本市場進出への興味は?と尋ねると「実は今まさに日本を拠点としたアジア展開を始めようとしているところなんだ」とトッドは応えた。

彼らが日本進出の足がかりとして見定めたのは蔵前である。旧国技館が閉鎖されてからは倉庫街となっていた蔵前周辺だが、昨今、オシャレなカフェや家具店、クラフト系ショップなどが入居、改装され、新たなトレンド発信地となりつつある。その蔵前地区にサンフランシスコと同様のファクトリー併設カフェをオープンするという。来年(2016年)1月末にプレオープンし、2月のバレンタインデーまでに本格始動するスケジュールで、すでに建物の確保も完了していた。

日本の第一号店は台東区の蔵前に

蔵前に出店予定のファクトリーカフェにて日本法人社長となる堀淵清治。改装中のファクトリーカフェはサンフランシスコの1号店と同程度の規模となる

さっそく日本法人の立ち上げ準備室に連絡を入れると、日本市場への進出に関して、ファクトリーカフェ出店を予定している蔵前で取材に応じてくれるという。そこでシリコンバレーから帰国後、あらためて日本進出シナリオについて、日本法人の代表を務める堀淵清治氏に話を聞いた。

世界的なクラフトブーム、それが日本に伝搬してきているとはいえ、チョコレートはコーヒーと比べても嗜好性が強いジャンルの製品だ。どこまで、クラフトムーブメントに乗って行けるものなのか。

「昔の日本では”子どものお菓子”のイメージが強かったチョコレートですが、今はその美味しさや応用範囲の広さから、嗜好品として拡がっています。都内のちょっとしたカフェに、オリジナルのチョコレート商品が置かれたり、クラフト系チョコレートを用いたケーキやドリンクを用意しているところも出始めました。同じ嗜好品でも、コーヒーに比べると日常性が低い嗜好品としてのチョコレートですが、一方で食品業界ではサードウェーブコーヒーの次のムーブメントとして"Bean to Bar”が注目され、これから伸びようとしているところです」(堀淵氏)

昨年日本に上陸したブルーボトルコーヒーはベイエリアのサードウェーブブランドでトップランナーだった。日本への進出が早かったのは、創業者が日本の文化に傾倒し、日本の禅文化にみられるようなミニマリズムや造形美、それに純粋にコーヒーの味を追求する日本的喫茶店文化にインスピレーションを得て、アメリカでのブルーボトルを成功させたということがある。いわばサードウェーブそのものが日本からの文化輸出だったという経緯も理由だったというわけだ。

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