
この戦略に基づき、2025年8月以降、ウクライナ軍によるロシア各地の石油精製施設、燃料倉庫、さらにパイプラインなどへのドローンによる攻撃が飛躍的に増えた。これまでも同様の攻撃はあったが、散発的だった。このためロシア側は被害の修復を容易に行えた。こうしたウクライナによるドローン攻撃はこの夏以降、散発的から「組織的」なものに変わった。国産の長距離ドローン「リューティ」は射程が1000キロ以上もあり、各地の精製施設を破壊し、燃料インフラに大きな打撃を与えている。
生命線の石油を攻撃され、追い詰められるロシア
ロイター通信などによると、8月には少なくともロシア製油所の10カ所が攻撃を受け、ロシアの製油能力全体の約17%、日量換算で110万バレル相当が失われた。この結果、ロシア国内でガソリン不足が深刻化しただけでなく、最大の外貨獲得源である石油輸出も減少する見通しといわれる。
さらにリューティは目標識別や誘導のために低コストのAIを搭載している。これには兵員の直接の戦闘関与を減らす狙いもある。その意味で、兵力集約型だった従来の戦争遂行から、21世紀的戦争へと移行し始めているとも言える。
こうした継戦能力奪取戦略は、実際にロシア側を着実に苛立たせている。これを端的に物語るエピソードが最近あった。クレムリンの意向を代弁するロシアの代表的プロパガンダ番組の司会者であるウラジーミル・ソロビヨフが、戦勝へのカギとして、ウクライナに石油精製施設への攻撃を提言してきたベン・ホッジス元米欧州陸軍司令官について、暗殺に値するとの趣旨を堂々と発言したのだ。
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