巨大フェリーが目指すは「志布志市志布志町志布志」 やや中途半端なターミナル港発着で「さんふらわあ さつま・きりしま」がしっかり儲けている訳

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

一度に700人・トラック100台以上を運べる大型フェリー「さんふらわあ  さつま・きりしま」は、ここまで小さな街になぜ発着しているのか? 運航を担う「商船三井さんふらわあ」に伺ったところ、志布志への発着によって「(志布志市と隣接している)宮崎県の南部、特に『宮崎県都城市(人口約17万人)周辺』からの観光・貨物需要取り込み」が見込めるという。

志布志市から30kmほど北側にある都城市は、自治体としては異例の「移住者に最大500万円給付」という積極策を打ち出し、宝島社「住みたい田舎ベストランキング」などで常に上位をキープしている。

「ふだんは都城、たまに大阪などで仕事」というライフスタイルの方も多く、大阪出張の際は、「志布志港の駐車場(※フェリー利用者のみ。台数に限りあり)に停めてフェリーで大阪、その日の晩に都城に戻る」といった、実質日帰りの弾丸出張も可能。「晩に九州を出て、朝には大阪」という、飛行機でも鉄道でも不可能な行程が組めるからこそ、「さんふらわあ さつま・きりしま」は2県の多くの人々に利用されているのだ。

さらに今年は、「フェリーと組み合わせて大阪に実質日帰り可能」という立地を生かして「大阪・関西万博に行きたい!」という観光需要をガッチリとつかみ、期間中は「全体で前年比1割増、パックツアーは約3倍増」と、大幅に利用を伸ばした。これも、実質日帰りが可能な「さつま・きりしま」だからこそと言えるだろう。

鹿児島県内への連絡を考えても、志布志港は東九州道経由で直通できるため、連絡バスなどの利便性はそこそこに良い。かつ、都城方面の自動車道「都城志布志道路」も2025年に全通しており、周囲からのアクセスもさらに改善されるだろう。

どうやら志布志港は、鹿児島県だけでなく、「2県をまたぐ広域ターミナル」として利便性が良く、将来もかなり有望であるようだ。

志布志航路の貨物は「鹿児島・宮崎からダブル集荷」!東京の食糧事情にも影響

さんふらわあから降りてくるトラックの様子
大阪港に到着した「さんふらわあ」から、トラックが次々と首都圏に走り出す(筆者撮影)

さらにお話を伺ったところ、宮崎県南部・鹿児島県の2県から幅広く集荷できる志布志港への発着は「貨物の輸送にも有利」であるという。

2県が誇る県産品といえば、宮崎は地鶏、鹿児島は黒豚。「さんふらわあ さつま・きりしま」は、2県合わせて鶏が全国シェア4割、豚が2割という「食肉」の出荷で大活躍しているという。ほか魚・野菜などがトラックごとフェリーに積まれ、運転手さんはフェリーでひと晩熟睡。大阪港に到着してすぐ、トラックに戻ってハンドルを握り、関東方面に走り出す……こうして届いた「さんふらわあ経由の肉・野菜・魚」が、気づかずとも首都圏の食卓に並んでいることもあるあるだろう。

そして大阪発の下り便では、鹿児島・宮崎で消費される飼料・餌などが多量に運ばれているそうだ。こういった利用の獲得も「志布志に発着しているから」こそで、「さつま・きりしま」は、長距離フェリーが収益を上げる必須条件「上り・下りともに貨物需要を獲得」できているからこそ、安定して経営できているのだ。

さんふらわあ むらさき
大分県・別府方面に発着する「さんふらわあ むらさき」。「さんふらわあ」は全国各地を結んでいる(筆者撮影)
次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事