「EF58形」長距離列車を牽引した電気機関車の軌跡 ブルトレから荷物列車まで、昭和の電化幹線を席巻
当時は夜行列車全盛時代、九州方面の長距離急行や特急「つばめ」「はと」などの優等列車はほとんどEF58形が牽引した。「つばめ」「はと」の専用機関車には特別な塗装が施され、その機関車と客車のライトグリーンの色合いから「青大将」と呼ばれた。
また特筆すべきは、天皇陛下や皇室の人たちが旅行をされるときの「お召列車」の専用機関車として、60号機と61号機が製造されたことだ。両機は「ロイヤルエンジン」として知られ、銀色の帯が車体全体に入った美しい仕上げでまるで漆塗りのような輝きを放っていた。

のちに60号機は指定機関車から解除されて廃車となったが、61号機はJR発足後も運用され、お召列車のほか、各種優等列車や特別列車の牽引に使われてきた。2022年からは、大宮の「鉄道博物館」で保存展示されている。
ブルトレや夜行急行の先頭に
ここからは、筆者が50年間にわたり全国の電化区間を走り続けたEF58形の中で、印象に残る活躍の場を振り返ってみたいと思う。
まず、私たちの世代に記憶として強く残っているのは東京発、西日本方面への急行、特急列車であろう。九州方面の急行「雲仙」「阿蘇」や特急「はやぶさ」「つばめ」「さくら」などで、旧型客車の先頭に立ったのはEF58形だった。

初のブルートレインとなった特急「あさかぜ」も、登場時の20系客車の牽引を担ったのはEF58形だった。1960年に公開された映画『大いなる驀進』(東映・関川秀雄監督)は20系客車内の列車クルーを描いた作品で、東京駅を発車するシーンは特急色のEF58形がカラーで記録されている貴重な映像だ。
のちにEF60形シリーズが登場すると、これらの優等列車はほとんどがEF65形500番台に代わったが、その後も寝台特急「紀伊・いなば」はEF58形が14系客車を牽いていた。

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