IFRSはまったくモノづくりに合わない--『IFRSはこうなる』を書いた田中 弘氏(神奈川大学経済学部教授)に聞く

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米国は米国基準をIFRSだと言いたがっている。いわば国際会計基準のラベルだけ、米国製と書いてある上に張りたいようだ。米国は力があるためそう言いだしたらほかの国は反論できないから、たぶんそれが通る。そうすると、日本も使っているといえば使っているのだから、これ以上することはない。早期適用をする会社に対しての任意適用に加えて、これからやりたいところはどうぞというぐらいで、IFRS導入に対応したらどうだろうか。

世界的には、IFRSは強制的な基準ではなくて、国際的なモデル基準になるのではないか。ただし、モデル基準としてもたぶん長続きはしない。企業売買には向いても、モノづくりに合わないからだ。

──日本基準の会計原則はこれからもありですか。

経営者が本来の儲けをしっかり計算できるような、モノづくりに徹した会計基準を強めるべきだ。現行の会計基準もいいわけではなくて、問題点がいっぱいある。個別財務諸表の基準であるのにIFRSに近い接ぎ木をしたりもしている。伝統的な会計基準には、利益操作に使えるなどの欠陥もあるので、それについては特に改善が急がれる。

たなか・ひろし
1943年北海道生まれ。早稲田大学商学部を卒業。同大学大学院博士課程を修了。愛知学院大学、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス客員教授などを経る。英国立ウェールズ大学経営大学院(東京校)教授、日本生命業務監視委員、ホッカンホールディングス独立委員会委員なども務めている。

(聞き手:塚田紀史 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2012年4月21日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


『IFRSはこうなる』 東洋経済新報社 1680円 227ページ


  
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