ジム・ロジャーズ「金融緩和と円安を続けても日本は貧しくなるばかり」、日本の没落を防ぐには何をすればいいのか

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「ところが、円の価値が下がったことで、日本への旅行が割安になった。先の話とは逆のことが起こっていて、日本で使う1万円でこんなに多くのものが買えるのか、こんなに贅沢な食事ができるのか、と多くの旅行者がお得感を感じている。コロナ危機後は、さらに円安が進んだので、海外の人が感じるお得感はさらに高まっていて、その結果、日本へやって来る外国人旅行客の数が激増した。これこそが円安の正体で、日本の国民は気づかないうちに、自分たちが得ていた価値を失ってしまったのだ」

しかし、この「安さによる人気」は果たして望ましい状態なのでしょうか。ヨーロッパの一部の観光地では、オーバーツーリズムによって地元住民の生活環境が悪化し、反観光運動が起きているほどです。スペイン、イタリア、ギリシャ、クロアチアなどでは観光客による需要増で家賃や物価が高騰し、生活コストの上昇が深刻な社会問題となっています。場合によっては、観光客に対して敵意を示すような行動に出る住民も存在します。

日本でも円安を背景に、外国人投資家などの影響で都心部の不動産価格が高騰しています。本来であれば、人口減少が進む日本では不動産価格が緩やかに下がるのが自然な流れのはずです。しかし、特に東京や大阪、京都などの都市部では、外国人による不動産購入が活発になっており、それが価格の押し上げ要因となっています。

「価値で選ばれる国」への転換が必要

「最大の買い手は中国だ。もともと中国の人たちは、日本人同様、不動産に対して高い価値を感じていて、不動産への投資意欲が強い。(中略)日本人が1億円のマンションは高くて買えないと思っても、1億円は安い、すぐに買いたいと思う海外の人たちがたくさんいるのだ。デフレの時代しか知らない日本人には理解できないかもしれないが、あっという間に、1億円のマンションが1億5000万円になり、2億円になるという現象が起こっている」

ロジャーズ氏は繰り返し「根本的な構造改革こそが重要」と述べています。大胆な金融緩和で一時的に経済指標を好転させたとしても、それは本質的な解決策にはなりません。日本が抱える最大の課題は、人口減少、労働市場の硬直性、規制の多さなど、構造的な問題です。これらに真正面から向き合わなければ、いずれ経済は行き詰まり、通貨の信認も損なわれかねません。

筆者もシンガポールという国際的な競争の激しい環境で生活しているからこそ、日本の相対的な地位の低下を肌で感じます。今、日本に求められているのは「安さで選ばれる国」から、「価値で選ばれる国」への転換です。そのためには、教育、イノベーション、働き方改革、女性活躍、育児支援など、長期的な視野に立った政策の実行が不可欠です。

円安は「1つの現象」に過ぎませんが、その裏にある構造的な問題を見逃してはいけません。今後の日本が進むべき道は、過去の延長線上ではなく、大胆な変革によってこそ拓かれるのではないでしょうか。

当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています。

花輪 陽子 ファイナンシャルプランナー

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はなわ ようこ / Yoko Hanawa

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)CFP®認定者。外資系投資銀行を経てFPとして独立。2015年から生活の拠点をシンガポールに移し、東京とシンガポールでセミナー講師など幅広い活動を行う。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』 (講談社+α新書) 、『夫婦で貯める1億円!』(ダイヤモンド社)など著書多数。花輪陽子オフィシャルサイト 海外に住んでいる日本人のお金に関する悩みを解消するサイトも運営。まぐまぐ「花輪陽子のシンガポール富裕層の教え 海外投資&起業実践編」も。

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