【朝ドラ】「こんな本はこれ一冊にしてください」 やなせたかし、散々だった「あんぱんまん」の評判

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編集者のセンスを疑うが、一風変わったヒーローだったことは否めない。やなせ自身も、フレーベル館から出した『あんぱんまん』が受け入れられるとは思っていなかったようだ。

正義のためにたたかう人はたぶん貧しい

「この絵本に登場したアンパンマンは、ぼろぼろのつぎはぎだらけのマントである。正義のためにたたかう人はたぶん貧しくて新しいマントは買えないと思ったからだが、今の子供達に受け入れられるとは思わなかった。奇妙な絵本としてすぐに忘れられると思った」

フレーベル館の編集者も面食らったらしい。やなせはこんな苦言を呈されている。

「やなせさん、こんな本はこれ一冊にしてください。やなせさんの本質はやっぱり『やさしいライオン』のような絵本ですよ。あんな本をまた書いて下さい」

不評だったために、しばらく絵本としてアンパンマンを描くことはなかった。それでも、やなせのなかで、『アンパンマン』というキャラクターに対して、諦めきれないものがあったのだろう。『詩とメルヘン』で大人向けの『熱血メルヘン怪傑アンパンマン』をスタートさせている。

しかし、この連載も1年で終えることになり、妙に気に入っていたキャラクターもこれまでか、に見えた。

まさか自分の知らないところで「アンパンマン」の人気がじわりじわりと、子どもたちの間で広がっていようとは、このときのやなせは知る由もなかった。

(つづく)

【参考文献】
やなせたかし『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)
やなせたかし『ボクと、正義と、アンパンマン なんのために生まれて、なにをして生きるのか』(PHP研究所)
やなせたかし『何のために生まれてきたの?』(PHP研究所)
やなせたかし『アンパンマンの遺書』 (岩波現代文庫)
梯久美子『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』 (文春文庫)
真山知幸『天才を育てた親はどんな言葉をかけていたのか?』(サンマーク出版)

真山 知幸 著述家

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まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は『大器晩成列伝 遅咲きの人生には共通点があった!』( ディスカヴァー・トゥエンティワン ) 、『ひょんな偉人ランキング ―たまげた日本史』(さくら舎)。「東洋経済オンラインアワード」で、2021年にニューウェーブ賞、2024年にロングランヒット賞受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/

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