「冤罪の可能性があるのでは」「火のないところに煙は立たない」と議論に…サントリー新浪氏「捜査結果を待たず辞任」の重大論点

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さらに、③としてトランプ大統領のフェンタニル規制もある。国際的な薬物規制の強化は知られるところだ。

現在、国際的に麻薬(フェンタニル)の流通が問題視されている。日本がアメリカに違法薬物の輸出拠点になっているという報道もあった。日本も規制を強化せざるをえない状況がある。危険ドラッグ監視の厳格化はホットなトピックといっていい。また、軌を一にして、麻薬・指定薬物の新規指定も実施されている。

繰り返すが、私は陰謀論を信じない。そして、大麻の所持や使用には当然ながら反対だ。なので、自宅捜索、違法薬物に対する社会的関心の高まり、行政による監視強化のタイミングはたまたま一致した可能性も当然ある。

「著名人をターゲットにし、抑止効果を狙った」というような論を述べてきたが、あくまでも「可能性」の域は出ない。ただ、少なくとも、そう見ることもできる、という話だ。

今回の問題の視座

ところで企業経営という観点でも、今回の騒動では論点がいくつかある。

重要なところで言えば、「捜査の結果」より「世論の判断」を優先した点。サントリーは「捜査の結果を待たない」経営判断を下した。今後の日本企業における危機管理のスタンダードになるか、または、なるべきだろうか。

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企業は結局のところ理屈よりも、リアルな企業価値の上下を気にする。とりあえず企業ダメージを最低限に抑えた意味ではよかった。しかしスタンダードになるかは議論の余地があるだろう。

何度もいうものの、私は大麻の所持や使用に反対だし、法律を遵守するべきだと思っている。

それでもなお、本人は潔白だと主張しており、さらに捜査が完了していない。結果がどうであれ、この段階では、推定無罪を前提に議論したいものだ。

なぜなら、もし完全なシロだった場合、解任させられた側のキャリアを奪うことになるからだ。

今回の新浪さんのケースでは”辞任”ということだ。ただ、一般論として取締役会が代表取締役を解任させ、その後に無罪となれば取締役会側が訴えられる。個人の損失の補償、あるいは立場の復活を求められるだろう。

企業側としては、レピュテーションリスクを意識せざるを得ないのも事実だが、判断にも一定のリスクは生じる。今回の新浪さんの事案はさまざまな問題をつきつけている。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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