近鉄2610系、「長距離駆ける一般車両」の半世紀 大阪線・名古屋線の急行用、当初はクロスシート車

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2610系は1972年、2200系の置き換え用に登場した。2200系は近鉄の前身の1つである旧参宮急行電鉄が宇治山田駅まで開通した1930年代から活躍していた半鋼製車両だった。

2610系は当初から冷房装置を搭載。1976年までに4両編成17本が製造された。片側4ドア車で登場時は対面固定式クロスシートが車内に並んでいた。長距離を走るためトイレも設置した。

4ドアで国内初のクロスシート車となった2600系や、近鉄初の冷房装置付き車両2680系の量産車としての一面もある。

近鉄では大阪万博開催の1970年に鳥羽線の五十鈴川―鳥羽間や、難波線の上本町―近鉄難波間が開業。大阪と名古屋・伊勢志摩方面を結ぶ特急の多くが難波発着となった。1975年には大手私鉄で最長の新青山トンネル(5652m)が開通して大阪線が全線複線化するなど、2610系の登場は近鉄の輸送力増強の時期に重なる。

近鉄2610 クロスシート 登場時 車内
2610系の登場時、車内にはクロスシートが配置されていた(写真:林基一氏提供)
【写真】かつてのクロスシート時代の車内を写した貴重な白黒写真を見る

実は「L/Cカー」の先駆け

1988年に片側3ドアで転換クロスシートの「5200系」がデビューすると、車体更新工事に併せて側面の窓を背にしたロングシートに改造されていった。1編成に1カ所、トイレの横にだけクロスシートが残る。

また1996年2月にはロングシートとクロスシートを切り換えられる「L/Cカー」へ試験的に改造した2600系2621編成が運用を開始。翌年登場した「5800系」での本格運用につながった。

現在、L/Cシートを備えた2610系は計3本ある。シートの交換や車体の更新などを経て、2610系は登場以来、1両も欠けることなく活躍を続けてきた。

近鉄2610 現在 トイレ横クロスシート
現在はロングシートに改造された2610系の車内。トイレの横にだけクロスシートが残る(記者撮影)
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