ガンダム安彦氏が「ORIGIN」に託した情念

シャア・アズナブルは何のために戦うのか

シャアの妹であるセイラ・マス(本名はアルテイシア・ソム・ダイクン)

たとえば、さきほどのシャアの性格付けですが、「機動戦士ガンダム」の後半で登場するララァというキャラクターについて、「ララァは私の母親になってくれるかもしれない女性だった」というセリフがあったと、ブレーンの1人が言っていたんです。

僕は記憶になかったのですが、それは「機動戦士ガンダム」ではなく、「逆襲のシャア」という映画でのセリフだった。でも「それだ!」と思って、シャアの復讐の動機を父親の死ではなく、母親の死にすることにしたのです。

――オリジンには、キシリア・ザビ(ザビ家の長女)がまだ子供のシャアに手錠をかけるシーンが出てきます。「機動戦士ガンダム」でキシリアが「子供の頃のキャスバル坊やと遊んであげたことがあるのだよ」と言い、シャアが「手の震えが止まりません」と返したシーンがあるのですが、これと関係ありますか。

富野由悠季氏の作劇の特徴として、ドラマのあちこちに唐突に布石を打っている。その中には気づかないふりをして通り過ぎてもいいものもあるのですが、そうではないものもある。

僕は「遊んであげた」という言葉に引っ掛かった。キシリアとシャアには、かつて何らかの接触があった。それは2人の心の中に残るものだった。きっと「遊んだ」という素直なものではないだろう。では何だろうと考えたときに、大人の毒のある遊び、つまり恫喝したことを「遊んであげた」という言葉で表現した。この解釈しかありえない。

――富野さんもそういうつもりで台詞を書いたのですか。

それは野暮だから確認していないし、確認すべきことでもない。富野氏の演出を知っている者として想像するしかない。

デギン・ザビは悪人ではない

――ザビ家のキャラクターの人物像が複雑になりました。

デギン・ザビ(ザビ家の当主でジオン公国公王)はジオン・ズム・ダイクンのサポーターだったわけで、バランスのとれた大人です。知識人でもあった。ジオンというカリスマをあえて毒殺して、国を乗っ取ろうとするはずがない。声を演じる役者さんにも「デギンは悪人ではない。悪人としての演技はしないでください」と伝えました。

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