「WBC」ネットフリックス独占中継に批判の声が殺到する、日本特有の根本的な理由

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しかし今回は有料配信サービスのネットフリックスが独占配信を担う。もちろん熱烈な野球ファンや大谷ファンであれば、お金を払って視聴するだろう。

だが、そこまで熱心でないライト層の中には「わざわざお金を払うほどではない」と判断して、見るのをやめてしまう人も出てくるかもしれない。

スポーツの国民的な盛り上がりというのは、コアなファンだけでは生まれにくい。むしろ、普段はスポーツを見ない人や、何となくテレビのチャンネルを合わせた人たちが同時に試合を目にすることで「社会現象」と呼べるような熱狂が生まれる。そうした偶発的な広がりが失われてしまえば、前回のような盛り上がりは期待できない。

日本では、特に年配層を中心にネットフリックスのような配信サービスの利用に対して心理的な抵抗を感じる人が少なくない。スマートテレビなどを用意し、インターネット環境を整え、アカウント登録を行い、料金を支払う。そうした一連の手続きを面倒に感じて忌避する人が一定数存在する。

非デジタル世代を切り捨て?

地上波のように「テレビをつければ見られる」という単純さに比べると、見られるようになるまでのハードルが高く、視聴をあきらめる人も出てくる。今回の決定が「高齢者や非デジタル世代を切り捨てている」と感じる人がいるのも無理はない。

ただ、ここまで強い反発が巻き起こるのは、日本人が地上波テレビに対して抱いてきた特別な感情の表れでもある。日本では地上波テレビは単なるメディアではなく、電気や水道と同じような「社会的インフラ」として根付いてきた。国民的なイベントは地上波で無料で放送されるべきだという信念が維持されてきた。

そのため、「WBCが地上波で見られない」という事態は、人々にとって単なる利便性の問題ではなく、生活の前提条件を覆されるような違和感として受け止められているのである。

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