4年間「不登校ゼロ」!校長が大切にした4つのポイントや実践に学ぶ「安心して通える学校づくり」 就学時健診に着目した「科学的アプローチ」も
「秋は、運動会や音楽会などの学校行事が多い季節。夏休み前に頑張った子ども、例えば不安を伝えられなかった子どもが厳しい練習等で『心のコップ=登校エネルギー』が枯渇してしまうことがあります。教員は『さらにまとまりのあるクラスにするぞ』と張り切るのも重要ですが、全員が満足できる行事参加のあり方を子どもたちと一緒に考えたり、『NO』や『助けて』が言える心理的安全性の高い学級をつくっていったりする姿勢が大切ではないでしょうか」
不登校対策としては、「小学校1・2年生は、学習や行動、友達との関係など、自分の土台をつくる大事な時期。不登校予防の最前線でもあります」と、就学前から低学年にかけての早期支援の大切さも強調する。
板倉氏は7年前まで教育委員会指導主事を務めていたが、当時、就学時健康診断で実施した「TK式就学児用発達検査」の下位検査項目(語彙、関連性の発見、数の理解、聞き取り)の結果に凹凸があった子どもは、入学後に支援が必要となる傾向があることに気づいたのだという。
そこで熊谷市は昨年度から、東京未来大学こども心理学部講師の佐藤亮太朗氏と連携し、同検査の結果を活用した不登校や困難さの予防研究を始めている。今年度は、板倉氏が現在校長を務める熊谷市立妻沼小学校ともう1つの小学校で、検査結果を基に通常学級のクラス編制を行った。
「就学前のデータはこれまで、特別支援学級の就学判断に活用されることが多かった。しかし、通常学級で入学後に困り感が出て学習につまずいたり不登校につながったりする子は少なくありません。そうした子どもたちを、エビデンスを基に予防的に支援できるのではないかという仮説の下、クラス編制の検証を進めていきます」(板倉氏)
板倉氏は、「子どもの変容=子ども自身+教師の力」という足し算だと考えている。
「子どもは少しずつ成長していく存在であり、キャパシティーが一気に増減することはありません。子どもの変容を左右するのは私たち教員の理解や指導なのです。子どもを変えるには、教員がやり方を変える、つまり個別化の視点を持つしかない。子どもの成長や望ましい変容のためには、いかに大人のバイアスを取り除き、科学的、客観的、多面的な視点で共感的に子どもを見ていくかが課題だと思います」(板倉氏)
(文:中村藍、編集部 佐藤ちひろ、写真:板倉伸夫氏提供)
東洋経済education × ICT編集部
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