マーク・ザッカーバーグ、インドで思わぬ反発 壮大な「善意」は空振りに終わるのか

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ンターネット・ドット・オーグの無料サービスには、ニュース記事や健康・求人関連の情報の配信、そしてテキストのみでのフェイスブックの利用が含まれる。つまりデータ通信量と通信会社のコストを最小限に抑えているわけだ。フェイスブックによれば、主な目標は人々にインターネットがどんなものかを知ってもらうことだ。

だがインドの多くの人々にとっては、それだけでは不十分だ。その上、無料サービスはフェイスブックの登録者を増やしリライアンスの有料プランに加入させるための方便だと受け止められている。

ザッカーバーグは本気だが

フェイスブックに対してはこんな批判の声も上がっている。無料にする代わりにデータ量に制限を設けるだけでどのウェブサイトも見られるならいいが、インターネット・ドット・オーグの無料サービスではフェイスブックが恣意的に選んだパートナー企業のものしか閲覧できない。インド政府も同じような見方をしており、こうした無料サービスに対する規制を検討している。

ザッカーバーグに対しインターネット・ドット・オーグについての取材を何度か申し込んだが応じてはもらえなかった。だが彼は今も、このプロジェクトに強い意欲を燃やしている。「インターネットへのアクセスは人権と人の持つ可能性に大いに力を与えてくれる手段だと捉えられるべきだ」と彼は9月、国連で述べた。

インターネット・ドット・オーグの提供する無料接続サービスは現在、インドネシアやパナマなど25カ国で利用できる。また、フェイスブックは無料接続サービス以外に、農村向けの低料金Wi-Fi接続サービスや、ドローンを使ったネット接続サービスといった試みにも多額の投資を行っている。

ザッカーバーグはまた、インドの人々の支持を勝ち取る気満々だ。9月には、シリコンバレーの本社で訪米中のインドのモディ首相と対談し、その模様をネット中継した。今週はニューデリーに乗り込み、インドのフェイスブック利用者(約1億3000万人)の一部からの質問に答えるイベントを行う。

だが8月に記者が現地取材した印象から言えば、道のりは遠そうだ。訪ねた場所はムンバイの中でも約100万人が暮らすダラビというスラム街だ。

ムンバイのダラビの子ども達。その横で携帯電話で話をする若者の姿が見える(写真:Asmita Parelkar/The New York Times)

ダラビでは、リライアンスの「フリーネット」(インターネット・ドット・オーグと組んで提供している無料接続サービスの名前)の看板がいくつか目についた。だが、汚水がちょろちょろ流れる細い路地に入ると、インターネット・ドット・オーグの存在に気づいている人がいる様子はほとんど見られない。

紅茶を売る露店で携帯電話ユーザー十数人をつかまえて話を聞いたが、誰1人としてフリーネットやインターネット・ドット・オーグについて知る人はいなかった。その一方で、リライアンスのデータ通信速度やカスタマーサービスが、大手のエアテルやボーダフォンに比べて劣るという話は多く聞かれた。

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