極めて特異な『神戸女性殺害事件』異常行動の背景にある谷本将志容疑者(35)の“歪んだ動機”

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これらの特徴は、反社会性パーソナリティ傾向や衝動統制不全とも一致し、本件における容疑者のパーソナリティ要因において重要な要素であるといえる。

これらをまとめると、現時点で本件は、非親密者による機会選択型暴力である可能性が最も高い。そこに、生活困窮や社会的不適応による怒り、過去の暴力経験に基づく再犯傾向が重なっている。性的動機は現時点で裏付けがなく、保留されるべきだが、今後の捜査や精神鑑定の結果を注目したい。

今回の事件は未然に防げたか?

本件のような事件は、非常にまれな特殊事件であることに加え、被害者が加害者を認識していないため、予防がきわめて難しい。都市空間の防犯設計(監視カメラの死角排除、オートロックの多重化)、帰宅時の安全確保が必要である。

同時に、暴力既往者のリスク管理を強化し、生活困窮や精神健康の問題を早期に把握する司法・福祉の連携が不可欠である。特に、治療プログラムの実施や保護観察などの社会内処遇が重要である。

今後本件の動機解明は、デジタルフォレンジック、精神鑑定、過去事案の詳細分析を経て行われるだろう。

今回の事件を受けて、特に一人暮らしの女性は恐怖や不安を高めていることと推察される。捜査が進展し、十分な動機解明がなされることによって、行きずりの致死的暴力の予防策に資する重要な知見となることを期待したい。

原田 隆之 筑波大学教授

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はらだ たかゆき / Takayuki Harada

1964年生まれ。一橋大学大学院博士後期課程中退、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校大学院修士課程修了。法務省法務専門官、国連Associate Expert等を歴任。筑波大学教授。保健学博士(東京大学)。東京大学大学院医学系研究科客員研究員。主たる研究領域は、犯罪心理学、認知行動療法とエビデンスに基づいた心理臨床である。テーマとしては、犯罪・非行、依存症、性犯罪等に対する実証的研究を行っている

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