極めて特異な『神戸女性殺害事件』異常行動の背景にある谷本将志容疑者(35)の“歪んだ動機”
④性的サディズム的動機の可能性
「殺害行為そのものが性的興奮を伴っていたのではないか」という仮説も考えられる。性的サディズム的殺人は、暴力と性的満足が結びついた犯罪であり、被害者への性的暴行、現場(被害者の居室など)への長期間の残留、遺体損壊、精液遺留などが典型所見とされる(Ressler et al., 1988)。現時点では、本件では、これらの兆候は確認されておらず、その可能性も低いといえる。
しかし、過去の犯行地を再訪している点は、過去の暴力体験を「再現」する心理的要素を示唆する。前回の犯行では、被害者宅に長時間残留し、好意を繰り返し伝えていたとも報じられている。
そのとき、被害者の首を絞めた際に、強い性的快感を抱いたのだとすれば、危険な性的サディズムの存在が考えられる。
Mokrosら(2014)は、性的サディズム的殺人者の一部に、過去の行為を反復・再現する傾向があることを報告している。現時点では、性的動機を主要仮説とする根拠は不足しているが、デジタル履歴(暴力ポルノ閲覧、殺害ファンタジー検索)、過去の性暴力歴、精神科評価が今後の焦点となるだろう。
逃走行動から推測できることとは?
奥多摩での発見時、容疑者は駅から数キロ離れた土地勘のない場所を歩き、スナック菓子を食べていたという。この行動は、計画性と未熟さが併存する心理を映し出す。
犯行現場から直ちに長距離移動した後、さらに都市部から離れ、人目を避けるという点では計画性や合理性が窺われる。
一方で、重大な犯罪直後にもかかわらず心理的緊張感や興奮が持続せず、脱力したかのような行動に至っていたのは「冷却期」(犯行後の感情平坦化)、罪悪感や共感性の欠如、問題対処能力の乏しさを示す。
また、見知らぬ場所をあてもなくさまよっていたということは、計画性のなさの反映か、自殺する場所を選んでいたのかもしれない。
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