極めて特異な『神戸女性殺害事件』異常行動の背景にある谷本将志容疑者(35)の“歪んだ動機”
②グリーヴァンス駆動(生活ストレスの外的攻撃)
容疑者の経済的困窮や社会的不適応、孤立などは、社会や無関係な他者への怒りや敵意を増幅させる慢性的ストレス源である。Agnew(1992)の一般化ストレイン理論によれば、慢性的なストレスは負の感情を媒介し、無関係な他者への攻撃行動に転化することがある。
慢性的なストレスや孤立のなかで自暴自棄に陥り、「誰でもいいから殺したかった」「死刑になりたかった」などという動機から凶悪犯罪に至るケースもある。
本件では300万円ほどの借金を抱えていたと報じられており、給与の前借りも多かったとのことで、経済的困窮が示唆される。また、雇用主の談話では、勤務態度は良好だったようだが、交際相手などはいなかったとのことだ。
故郷を遠く離れた場所で生活を始めたばかりで親密な関係が希薄であったことや、孤立のなかで先の見えない不適応感を抱いていたことも推測される。
本件の態様からは、凶器の遺棄、目立つヘアスタイル、無計画な逃走などの行動様式は、逮捕を免れようとしていないその場しのぎの捨て鉢な傾向が示唆され、この仮説を補強する。
前回起こした事件の処罰も効果がなかった
③再犯リスクの高い危険犯罪者プロファイル
過去の殺人未遂容疑での逮捕歴、責任最小化的供述(「殺意はわからない」)、勤務先への虚偽申告(前歴の隠匿)、奥多摩への逃走行動は、暴力再犯リスクの高さを示す典型的所見だ。
特に、過去の事件現場近くを再訪し、同種の犯行に及んだ点は、偶発ではなく、再犯傾向が持続している証拠とも考えられる(Douglas & Hart, 2013)。
つまり、きわめて反社会性、凶悪性の高い人物が、時を置いて再び同様の犯行に至ったという点で、反社会的パーソナリティの存在を窺わせるとともに、前回の事件後の処罰や特別予防に効果がなかったことを示唆している。
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