極めて特異な『神戸女性殺害事件』異常行動の背景にある谷本将志容疑者(35)の“歪んだ動機”

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日本の殺人事件の多くは、親族や配偶者、友人などの面識ある関係で発生する。警察庁の「令和6年の犯罪情勢」によれば、殺人事件における加害者と被害者の関係は親族間が過半数を占め、面識のない者による殺人は少数派である。本件が「面識なし」であるとすれば、統計上の希少事例に該当する。

ストーカー犯罪においても、McEwanら(2009)のメタ分析や、Mullenら(2009)のストーキングリスクプロファイルによれば、暴力化を強く予測するのは「当事者間の恋愛関係のもつれ」「過去の当事者間の暴力歴や脅迫行為」「精神障害」「アルコール・薬物使用」「犯罪歴」だ。

つまり、殺害や暴力にまで至る悪質で深刻なストーカー事案でも、それ以前に親密な関係があったケースが多い。

想定される動機の仮説とは?

①非親密・機会選択型暴力

容疑者の行動は、見知らぬ他人を標的とした「機会選択型暴力」として説明できる。犯行は当日の行動に関する報道に基づくと、被害者を脆弱な標的として選択したとみられる。

防犯カメラ映像による長時間の尾行、オートロック突破、凶器携行、犯行後の即時逃走といった行動は偶発性が低く、犯行はある程度計画され、機会を窺っていた可能性が高い。

さらに、犯行前に宿泊したホテルが過去事件現場付近であった点は、地理的行動圏固定化を示す。犯罪者が慣れた地域で再犯を行う傾向は、地理犯罪学(Brantingham & Brantingham, 1993)で指摘されており、本件にもそれが当てはまる可能性が高い。

これは、慣れ親しんだ場所のほうが、心理的に安心できること、逃走経路など地理に明るいことなどが理由だ。

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