「大恐慌の前夜に酷似してきた」という声も…。トランプ大統領の"最終シナリオ"

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1946年の大統領選挙で、正式に大統領となったペロンは、ペロン党(正義党)を作り独自外交路線や国防強化のための重工業育成を図り、ペロンの思想を「ペロニスモ」、ペロンの支持者を「ペロニスタ」と呼んで、大衆の圧倒的な指示を得た。

当時は、第2次世界大戦時に蓄えた豊富な外貨保有量は世界一と言われたものの、行き過ぎたポピュリズムによって、その後のアルゼンチンは国力を徐々に失っていく。豊かな資源に恵まれているにもかかわらず、財政破綻を繰り返し、現在も経済が低迷している。サマーズ元財務長官は、現在のトランプ政策はかつてのアルゼンチン政治に酷似していると警告しているわけだ。

一方、アメリカ国内でも100年前にポピュリズムに走った大統領が高い関税を課して、その税金を富裕層の減税に回す手法を用いて、経済を低迷させた歴史がある。トランプ同様に「アメリカ・ファースト」を抱えた第29代大統領「ウォーレン・ハーディング」だ。共和党の上院議員から大統領に当選した彼の政治もまた、トランプ政治によく似ている。

第一次世界大戦後、アメリカが国際連盟に加盟しなかったのもハーディング政権下の決定である。さらに、彼の時代に成立した「フォードニー・マッカンバー関税法」(1922年)は、その後の政権にも大きな影響を与えたとされる。高関税と大減税の組み合わせは株価を押し上げ、ハーディングの急死後もその路線はクーリッジ政権に継承された。結果として経済は一時的に繁栄したが、1929年の大恐慌への伏線ともなっていった。

大恐慌の前夜に酷似してきた世界の金融市場

資源に恵まれ、高い技術を持つアメリカだが、その力を継続するのは簡単なものではない。実際にアメリカ国民の大半は、苦しい生活に嫌気がさして、藁をも掴む気持ちでトランプ大統領を選んだのかもしれない。しかし、彼が現在進めようとしているのは、ノーベル平和賞の受賞のためのディールだろう。選挙で共和党に投票してくれる選挙民へのアピールに余念がない。

アルゼンチンや100年前のアメリカが突き進んだ「崩壊」の世界が見え隠れする。エコノミストの中にも、アメリカ市場のハードランディングの確率が日々高まっていることを指摘する人も少なくない。トランプ政策の終焉は、アメリカの繁栄の終焉かもしれない。そうなったとき、世界は第3次世界大戦のあるなしにかかわらず、再び「リセット」されることになる。

童話の「裸の王様」は、正直な子供の一言で自分が裸であったことに王様が気が付く物語だ。トランプ政権の周りにいる大人たちは誰も王様が裸だとは伝えない。もしかしたらトランプも、自分が裸であることに気が付いているのかもしれない。裸だとわかっていても改められない大統領の存在に、世界は今後もずっと警戒し続けなくてはならない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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