「大恐慌の前夜に酷似してきた」という声も…。トランプ大統領の"最終シナリオ"
こうした状況の中で、トランプ流のディールを「詐術」と規定して、その交渉術や心理戦を分析。そもそも「『貿易赤字は悪』『関税で製造業が復活する』との主張も根拠は乏しい。一連の関税騒動は、世間を欺く詐術にすら映る」(日経新聞、Deep Insight トランプ流「ディール」の詐術、2025年8月9日朝刊)、と指摘する報道もある。同記事では、その交渉術や心理戦を8項目に分けて分析しており興味深い。簡単に紹介しておこう。
●返報性原理……譲歩には、譲歩で応じたくなる心理を使う
●締め切り戦術……期限を切って相手に圧力をかける
●最後通告戦術……厳しい条件を一方的に提示して有利に交渉する
●乗り遅れ不安……他者に出遅れる不安心理をついた交渉術
●エスカレーション戦術……報復に対しさらなる報復を行う戦術
●良い警官・悪い警官戦術……硬軟の役割分担で揺さぶりをかける
●限られた権限戦術……別の決定権者の存在を盾にして譲歩を拒み、手の内の開示なども要求する戦略
かつてトランプは、大統領になる前に航空会社やカジノ、大学などの事業にも手を出し失敗している。しかしこうした失敗も認めずに、経済環境や規制を盾に責任を転嫁し、ときに戦略と称してその責任を出資した債権者に押し付けてきた。こうしたトランプ流の詐術は、実際のマフィア特有のノウハウだと指摘する報道もある。
正義なき政治に未来はあるのか?
こうしたトランプ政治を、最近世界は受け入れようとしつつあり、最高値を更新し続けている株式市場をはじめとして、トランプ流政治手法を認める動きが続いている。しかしながら、トランプの経済政策が危うい状況にあることはよく知られている。
アメリカの元財務長官であるローレンス・サマーズ氏は、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで「アルゼンチンは民主的に選出された指導者が民主主義を尊重せず、むしろ独裁的な政治を目指した数年間の政策決定によって、完全に軌道から外れてしまった」として、現在のトランプ大統領の政策に、警告を発している(2025年8月8日)。
アルゼンチンは、戦後まもなくフアン・ペロンが、大衆迎合主義=ポピュリズム運動を始めて、天然資源に恵まれた先進国として評価されていたにもかかわらず、ペロン主義と称して高い関税や輸入代替を掲げて、国内産業の振興を図った。さらに指導者への個人崇拝やメディアや大学、法律事務所など市民生活の一部に対する攻撃を実施した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら