【産業天気図・百貨店】業界再編が進むがその効果は未知数、「曇り」が続く
2007年度は、期を通じて「曇り」の厳しい状況が続きそうだ。個人消費は回復の兆しが見えつつあるとはいえ、大型専門店やショッピングセンターなど、新しい商業施設が増え続け、業態を超えた競争が激化。人口減で市場縮小がさらに進むと懸念される中で、いかに旧態依然とした経営体質から脱却し、高い収益性を確保できるかが鍵となりそうだ。
百貨店各社は、数年前から大規模なリストラや仕入れ体制の見直しなどを進めており、老舗ならではのハイコスト体質の改善を図ってはいる。だが、高い収益性を確保できているのは、いち早く改革を断行してきた伊勢丹<8238.東証>と大丸<8234.東証>の2社だけ。この2社の営業利益率が4%台と抜きん出ているのに対し、他社はいずれも2%台にとどまっており、効率経営というにはまだほど遠い状況にある。増収増益を続け、好調に見える高島屋<8233.東証>も、その収益を下支えしているのはショッピングセンター開発やシンガポールの子会社群。百貨店単体では減益である。
一方で、大丸と松坂屋ホールディングス<3051.東証>の経営統合、阪急百貨店<8242.東証>と阪神百貨店の経営統合、伊勢丹と東急百貨店の業務提携など、業界再編の動きは加速しているが、グループ化による合理化がどこまで進められるかは、まだ未知数。再編の機運が高まる中、潤沢な土地含み益を抱える松屋<8237.東証>、三越<2779.東証>などは、買収の標的になっているとも言われており、収益向上が急務となる。
こうした状況の中、大手各社は大規模改装、増床によって生き残りを賭ける。08年までに、日本橋三越の改装オープン、伊勢丹の大規模改装オープン、大丸の東京新店開業などが相次ぐほか、11年には大阪エリアで主要百貨店がこぞって増床を予定している。さらなる市場縮小が懸念される中、高コスト体質の改善による足元の基盤固めが重要なはずだが、そちらはまだ道半ば。攻めの一手で売り上げ拡大を図ろうという体質からの脱却は容易ではないようだ。
【堀越千代記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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